クラフトビール国内外のおすすめ14選。お気に入りの見つけ方は?
クラフトビールにはさまざまな種類があり、味・ラベル・ネーミングなどブルワリーごとのこだわりも違います。主な種類の代表的な銘柄を知っておけば、好みのビールを見つけやすくなるでしょう。お気に入りの探し方やおすすめのクラフトビールを紹介します。
クラフトビールとはどのようなタイプのビールなのでしょうか。特徴や魅力など、まずはクラフトビールの基本を解説します。
多くのクラフトビールは、小規模な醸造所で生産されています。大手ビールメーカーなどの影響を受けずに、それぞれが独立して造られている点も一つの特徴といえます。
ただ、最近は大手メーカーもクラフトビール醸造に参入していますし、日本酒メーカーや観光会社などを母体とするクラフトビールもあります。日本のクラフトビールにおいては、『独立していること』が明確な定義というわけではないようです。
伝統的な原料や手法で造られていることも、クラフトビールの定義とされています。
いずれにしろ、クラフトビールは自由度の高いお酒です。そもそもcraftという言葉には『職人の手作業や技術』といった意味があり、味にもネーミングにも豊かな個性とこだわりが感じられます。
一般的なビールにはない要素が楽しめる点も、クラフトビールの魅力といえるでしょう。
ビールの種類は、発酵方法の違いにより『ラガー』と『エール』に大別できます。下面発酵で造られるビールがラガー、上面発酵で造られるビールがエールです。
ラガーはすっきりとした味わいで飲みやすく、大量生産に向いています。大手メーカーが造るビールのほとんどは、ラガーの一種である『ピルスナー』です。
一方、エールには『ペールエール』や『IPA』など数多くの種類があり、クラフトビールの大半はエールが占めています。ラガーと違い、深い味わいと豊かな香りを楽しめるのが特徴です。
ラガーとエールはそれぞれ細かく分類され、さらに独自の原料や醸造方法を採用しながら発展してきたため、ビールの種類は世界に100以上あるといわれています。冒険しながら飲み比べを楽しめる点も、クラフトビールの魅力です。
クラフトビールを飲み比べる際は、以下に挙げる三つのポイントを意識してみましょう。お気に入りのクラフトビールが見つかりやすくなります。
クラフトビールを飲む際に食事とのペアリングを意識すれば、お気に入りのビアスタイルや銘柄を探しやすくなるでしょう。ペアリングとは、料理とお酒の相性を意味します。
ビールペアリングで意識するポイントは、ビールと料理の色・味・発祥国です。
淡色のビールにはあっさりした料理が、濃色のビールには濃厚な味の料理が合います。味の特徴でペアリングを行う場合は、同系統で合わせるだけでなく、異なる系統の味を組み合わせるのもおすすめです。
同じ発祥国のビールと料理をペアリングすれば、その国の人々がおいしいと感じる安定した味を楽しめるでしょう。
クラフトビールは、種類によりアルコール度数に大きな差があります。アルコール度数を示す数値『ABV』をチェックし、自分が飲みやすいものを探すことも大切です。
大量生産されている一般的なビールは、4~5.5%程度のABVで造られています。一方、クラフトビールのABVは、3%程度の軽いものから10%を超えるものまでさまざまです。
ABV以外に、苦味の強さを示す『IBU』も確認しましょう。飲みやすいと感じるABVやIBUを把握しておけば、お気に入りのクラフトビールを探す際の指標として使えます。
ビールは種類によっておいしく飲める温度が異なります。例えば『香り』を楽しみたいビールなら、キンキンに冷えているよりも少々ぬるめの温度帯のほうが香りが立ちます。ぬるめと言っても十分に冷たいと感じる温度です。
基本的には、ビールの色が濃くなるほど、高い温度で香りが出やすくなります。冷やして飲むのが合うピルスナーに対し、ヴァイツェン・ペールエール・スタウトはやや温度を高めて飲むのがおすすめです。
クラフトビールを飲む際は、グラスにもこだわってみましょう。例えば、細身で背の高いグラスは、ピルスナーのさわやかな苦味を引き立てるのに適しています。
豊かな香りが特徴のペールエールには、香りが引き立つ形状のグラスがおすすめです。口元の幅広いグラスなら、苦味や酸味が強いスタウトの良さを引き出しやすくなるでしょう。泡立ちの良いヴァイツェンは、背が高く中央がくびれたグラスで泡立ちを楽しみます。
世界のビールの主流を占めるピルスナーも、クラフトビールならいつもと違う味わいを楽しめるでしょう。おすすめのこだわりピルスナーを3点紹介します。
ラガーの代表格である『ピルスナー』は、世界で最も多く飲まれている大人気のビアスタイルです。日本では、流通するビールのほとんどをピルスナーが占めています。
発祥国はチェコ、発酵方法は下面発酵です。淡色麦芽を使っているため淡い色のものが多く、ABVは一般的に4.0~5.0%で造られます。
軽やかなホップの苦味と爽快なのどごしが特徴です。冷やした状態でジョッキに注ぎ、ゴクゴクと飲むスタイルが向いています。
『太陽のラガー』は、宮崎で誕生したこだわりのピルスナーです。宮崎ひでじビールが造るレギュラービール『ひでじビール』の主力商品として販売されています。
上質な天然水と自家培養の酵母から生まれる、さわやかな苦味やすっきりとした飲み口が魅力です。さまざまな派生スタイルが存在するピルスナーの中でも、ホップの苦味をしっかりと感じられるジャーマンピルスナーに分類されます。
IBUは約32、ABVは約5%です。大手ビールのIBUは約20なので、やや強めの苦味を感じられるでしょう。5℃前後にしっかり冷やして飲むのがおすすめです。
クラフトビールとして有名なピルスナーには、ビアへるんが造る『ピルスナー』も挙げられます。ビアへるんは、島根県は松江市でこだわりのビールを造り続けているブルワリーです。
すっきりとした爽快なのどごしを楽しめるビアへるんのピルスナーは、軽い口当たりでどのような料理にも合います。さんまやさばなど、脂ののった青魚と一緒に飲むのもおすすめです。
IBU約20・ABV約5%と、苦味やアルコール度数は一般的な大手ビールとほぼ同じですが、味もしっかりと感じられます。いつもと違うラガーを楽しみたい人にもピッタリです。
『アウグスオリジナル』は、東京都文京区にあるマイクロブルワリー『アウグスビール(AUGUST BEER)』の主力商品です。
通常のビールは酵母を取り除いた上で出荷されますが、アウグスオリジナルは熱処理やフィルタリングが加えられておらず、旨味の核である酵母がしっかりと生きています。
1842年誕生の元祖ピルスナーを深く追及した『原点回帰』ともいえる1本で、世界最古の醸造所である『ヴァイエンシュテファン修道院』のピルスナー酵母が使用されているのが特徴です。
ボディはコクのあるしっかりとしたタイプで、一口味わうごとに『チェコザーツ産ファインアロマホップ』の華やかな香りと爽やかな苦みが広がります。ABVはやや高めの5.5%です。
クラフトビール初心者なら、苦味が控えめで飲みやすいペールエールから始めてみましょう。ペールエールの魅力や、日本のブルワリーが造るおすすめのペールエールを紹介します。
『ペールエール』は、華やかな香りが特徴的なビアスタイルです。イギリス生まれであるため、『イングリッシュペールエール』と呼ばれることもあります。
麦芽やホップから引き出される豊かでフルーティーな香りは、ビールであることを忘れてしまうほどです。ペール(=色が淡い)という名のとおり、色はやや淡く、金色~銅色のビールです。
ピルスナーのようにすっきりとしたのどごしを楽しむのではなく、香りや味わいをひと口ずつ楽しむ飲み方が適しています。香りをより引き出すために、冷やし過ぎないのがおすすめです。
『天の川ペールエール』は、新潟のブルワリーである沼垂ビールが造るペールエールです。フルーティーな香りに加え、苦味やスパイスもバランスよく楽しめます。
沼垂ビールのクラフトビールは、新潟の食材を積極的に取り入れていることが特徴です。コシヒカリをはじめ、洋梨やお茶など地元の特産物を副原料に使用しています。
一般的なビールに比べ、麦芽比率を高めている点もポイントです。ぜいたくに使用した麦芽のおかげで、深い味わいと濃厚なコクを堪能できます。
ホップの苦味と高めのABVが特徴的なIPAは、クラフトビールを知るのに欠かせないビアスタイルです。特徴やおすすめの銘柄をチェックしておきましょう。
『India Pale Ale(インディアペールエール)』を略したIPAは、ペールエールから派生したビアスタイルです。ホップを大量に使用するため、強い香りや苦味が引き出されています。
味わいの主張が強いことから、濃い味の料理と好相性です。しょうゆベースの肉料理やスパイスの効いたエスニック料理などと一緒に飲めば、IPAの苦味や香りをおいしく引き立てられるでしょう。
製法や味わいなどの違いにより、IPAはさらに細かく分類されています。強いホップ感と高めのABVが特徴的な『インペリアルIPA』や、カスケードホップによる柑橘系の香りを楽しめる『アメリカンIPA』を覚えておきましょう。
江戸時代から長野で酒造りを続けている玉村本店は、オリジナルのビールブランド『志賀高原ビール』を展開しています。『志賀高原IPA』は、志賀高原ビールを代表するアメリカンIPAです。
華やかな柑橘系の香りに加え、キャラメルのような香ばしいアロマも楽しめます。麦芽の甘みがホップの苦味を包み込んでくれるため、IPA初心者でも飲みやすいでしょう。
鼻から抜ける若草のようなフレーバーで、爽快感も得られます。繊細かつ個性的な風味を楽しめるクラフトビールです。
『インドの青鬼』は、ホップの鮮烈な香りと強烈な苦味を楽しめるIPAです。人気のクラフトビール『よなよなエール』で知られるヤッホーブルーイングが造っています。
強烈な苦味と濃厚なコクに加え、アルコール度数が7%と高いため、パンチの強い料理と好相性です。餃子・チョリソー・キーマカレーなどと一緒に味わってみましょう。
インドの青鬼の香りとコクをより引き出すためには、少しぬるめの13℃程度で飲むのがおすすめです。飲み口の広いグラスに注げば、香りと併せて美しい琥珀の色合いも楽しめるでしょう。
やさしい味付けの料理に合うクラフトビールを探したいなら、原料に小麦を使用した白ビールがおすすめです。苦味の少ないさわやかな味わいを堪能できます。
原材料に小麦を使用して造られるのが『白ビール』です。他のビールに比べ色が明るいため、白ビールと名づけられています。
白ビールは、上面発酵で造られるエールの一種です。ドイツ生まれの『ヴァイツェン』やベルギー生まれの『ベルジャンホワイト』が、代表的なビアスタイルとして挙げられます。
苦味の少なさやフルーティーかつスパイシーな香り、小麦由来のやさしい味わいが白ビールの特徴です。ペアリングを考えるなら、さっぱりとした味付けのシーフードやサラダチキン、野菜料理などを選ぶとよいでしょう。
国内の白ビールでおすすめの銘柄が、茨城の常陸野ネストビールで造られている『ヴァイツェン』です。バナナのような華やかな香りとさわやかな味わいを楽しめます。
ヴァイツェンに使用されている麦芽は、ビールの本場イギリスから直輸入しているものです。IBUは約12と低めで、苦味のあるビールが苦手な人でもおいしく飲めるでしょう。
常陸野ネストビールは、ビール造り開始後わずか1年で、1997年に開催された国際ビールコンテストで金賞を受賞しました。その後もヴァイツェンを含めた多くのビールが、数々の国際コンテストで優秀な成績を収めています。
黒ビールは、焙煎された麦の独特な香りやまろやかな口当たりが楽しめるビールです。黒ビールの特徴やおすすめの銘柄を紹介します。
『黒ビール』とは、焙煎して濃色になった麦芽を使用するビールです。焦げた色味で黒っぽくなるため、黒ビールと呼ばれています。
焙煎により引き出されるビターチョコのような味わいが、黒ビールの特徴です。焙煎する麦芽には多くの種類があり、ローストされた麦の味わいも種類ごとに異なります。
発酵方法にかかわらず、黒っぽいビールは黒ビールに分類されます。『ポーター』や『スタウト』はエールの一種であり、『シュバルツ』はラガービールです。エールとラガーの2種類がある『デュンケル』も、黒ビールに分類されます。
黒ビールを試してみたい人には、箕面ビールの『スタウト』がおすすめです。ビターチョコやコーヒーのようなモルトの味わいを楽しめます。
一般的なスタウトには、甘くて濃厚な味わいのスウィートタイプと、キレがあり苦味も強いドライタイプがあります。箕面ビールのスタウトはドライタイプで造られていますが、まろやかさがあるため飲みやすいのが特徴です。
2009年にイギリスで開催された国際コンクールで、箕面ビールのスタウトは部門別の1位を獲得しています。その後も数々のコンクールで金賞を受賞するなど、世界に認められた実力を持つ黒ビールです。
おいしいスタウトを試してみたいなら、『ライオン スタウト』もチェックしておきましょう。スリランカを代表するビールメーカー『ライオン ブリュワリー』が製造しています。
多くの国際コンクールで金賞を受賞し、世界的な高評価を受けているスタウトビールです。リキュールのような上質な甘みと、後からくる濃厚な味わいを楽しめます。
ビターチョコの後味をほのかに感じられることも特徴です。古くからスリランカのアイデンティティーとされてきた勇壮なライオンがラベルに描かれています。
クラフトビールの中には、デザートとして楽しめるフルーツビールと呼ばれる種類もあります。フルーツビールの魅力や代表的な商品をチェックしましょう。
『フルーツビール』とは、醸造の工程でフルーツやフルーツシロップを加えて造るビールです。ビールとジュースを混ぜたものではなく、れっきとしたビールの一種として扱われます。
フルーツビールに使われるフルーツの種類はさまざまです。煮沸時・一次発酵中・二次発酵中など、フルーツを投入するタイミングの違いによっても味わいが変わります。
フルーツビールは食後のデザートと一緒に楽しむのがおすすめです。チューリップグラスに注げばビールが程よくかき混ぜられるため、香りがより立ちやすくなります。
フルーツビールの発祥国であるベルギーには、野生酵母を使用して独特の酸味を出す『ランビック』と呼ばれる伝統的なビールがあります。リンデマンスは、ランビックを200年以上造り続けている、ベルギーの老舗醸造所です。
ランビックにフルーツ果汁を加えたフルーツビールも造っており、数々のコンテストで受賞歴があります。中でもおすすめなのが、カシス果汁を加えて熟成させたフルーツビールです。
カシスのストレート果汁を投入しているため、果実感あふれる程よい酸味と甘い口当たりを楽しめます。食前酒に向いているほか、チーズケーキやチョコレートなどのデザートと合わせて飲むのもおすすめです。
『地ビール 独歩』は、日本酒の蔵元として100年以上の歴史を持つ宮下酒造のクラフトビールです。全ての原材料をドイツから取り寄せ、こだわりのビール造りに取り組んでいます。
『マスカットピルス瓶』は、地元岡山県産のマスカットを使ったフルーツビールです。天然果汁由来のすっきりとしたさわやかな風味を楽しめます。
2016年の全国酒類コンクールで地ビール部門の1位を受賞したビールであり、他にもコンテストでの受賞歴があります。冷やし過ぎず、5~10℃程度で飲むのがおすすめです。
見た目が美しいクラフトビールといえば、明るい琥珀色のアンバーエールとアルトが挙げられるでしょう。それぞれの特徴とおすすめの銘柄を紹介します。
『アンバーエール』とは、明るめの琥珀色が特徴的な、アメリカ発祥のエールビールです。酵母のフルーティーな香りや、しっかりとした苦味を堪能できます。
濃いめに味付けされた料理と合わせれば、麦芽の風味や甘みをよりしっかりと味わいながら飲めるでしょう。ABVに注目して選ぶことで、飲みやすさも調節できます。
アンバーエールと同じく琥珀色の見た目が魅力的なビールには、『アルト』もあります。濃厚な味わいでありながら、苦味を抑えたまろやかな口当たりも楽しめるのが特徴です。
ドイツ生まれのアルトには、ソーセージをはじめ、しっかりとした味付けの肉料理が合います。小さめのグラスで少しずつ飲めば、アルト本来の香りや味を存分に楽しめるでしょう。
国内のクラフトビールで人気が高いアルトといえば、田沢湖ビールの『アルト』が挙げられます。地元秋田を中心に、ビール通の間で評価が高いクラフトビールです。
田沢湖ビールのアルトは、独特のさわやかなホップの苦味と麦芽の風味を楽しめます。ドイツの伝統的なスタイルを継承した製法で造られていることも特徴です。
国内外のさまざまなコンテストで受賞歴があり、世界からも高い評価を受けています。ビールそのものを味わうというより、濃い味付けの肉料理と一緒に飲むのがおすすめです。
見た目の美しさでクラフトビールを選ぶなら、南信州ビールが造る『アンバーエール』もおすすめです。琥珀色の輝きと力強い味わいを堪能できます。
ホップから生み出される絶妙な苦味と、カラメルモルトの香ばしいアロマが特徴的です。IBUは約24と低めであるため、苦いビールが苦手な人でもじっくりと味わえるでしょう。
2003年に開催されたジャパン・ビア・グランプリでは、全銘柄の中で最高得点を獲得した実績もあります。エール系ビール特有のリッチな香りを楽しみながら、ゆっくりと味わうのがおすすめです。
定番の味に慣れてきたら、変わったタイプのクラフトビールにも挑戦してみましょう。スモーキーな味わいを楽しめるラオホを紹介します。
種類の豊富なクラフトビールの中には、『スモークビール』と呼ばれるビールがあります。その名の通り、燻した麦芽を使用して造られるビールです。
スモークビールの代名詞的な存在としては、ドイツのバンベルグで昔から醸造されている『ラオホ』が挙げられます。スモーキーな香りとモルトの甘みがクセになる味わいです。
燻製の風味を楽しめるスモークビールは、同じく燻製料理との組み合わせが合います。味付けたまごの燻製と一緒に飲めば、しょうゆや卵の香気成分をより引き立ててくれるでしょう。
いつもと違ったビールを飲みたいときには、スモークビールの定番である富士桜高原麦酒の『ラオホ』がおすすめです。ブナのチップで燻した麦芽による、濃厚な燻煙香を堪能できます。
ラオホの本場バンベルグのスタイルを踏襲して造られていることが特徴です。スモーキーな香りとモルトの甘味を感じながら、マイルドな口当たりを楽しめるでしょう。
2012年に開催された世界最大規模の品評会『World Beer Cup』と『World Beer Awards』では、ダブル受賞を達成しています。他にも国内外のコンテストで数多くの受賞歴を誇る逸品です。
数多くの種類が存在するクラフトビールには、それぞれの魅力を確かめながら自分好みのビアスタイルを探す面白さがあります。ブルワリーごとの個性を楽しめる点も特徴です。
好きな料理に合いそうな銘柄をチェックすれば、おいしいクラフトビールを見つけやすくなります。種類ごとの特徴や魅力を知った上で、お気に入りのビールを探してみましょう。
クラフトビール製造の初期投資はどれくらい?調達方法も紹介
クラフトビールの製造を検討する場合、初期投資がどのくらい必要なのかを知っておく必要があります。物件・設備・免許などさまざまな部分で費用がかかるため、計画的に準備を進めることが大切です。ビール製造に必要な費用や資金調達方法について解説します。
ブルワリーの開業には、ある程度の資金と時間が必要です。それぞれの目安を知り、計画を立てることの重要性を理解しておきましょう。
日本政策金融公庫の新規開業実態調査では、2012年度の飲食店開設費用の平均額が約883万円であることが分かります。不動産を購入した企業は調査の対象外です。
飲食店開設費用の平均額の内訳を見ると、内外装工事が41.7%と最も高い割合を占めています。機械・什器・備品などが21.1%、運転資金が19.1%、テナント賃借費用が17.5%と続きます。
ビール・発泡酒製造業者の販売形態の実態も知っておきましょう。国税庁の調査によると、平成30年度の販売形態はレストラン併設型が最も多く、全体の38.0%を占めています。
参考:新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引+|日本政策金融公庫
ブルワリーを開業する場合は、製造免許と販売業免許を取得しなければなりません。免許を受けるまでにかかる期間は、原則として製造免許が4カ月以内、販売免許が2カ月以内です。
ビールが完成するまでに約1カ月かかることにも注意が必要です。造り始めてから完成するまでの間は、オリジナルビールを提供できません。
このように、ブルワリーの運営を軌道に乗せるまでには時間がかかるため、ある程度の運転資金を確保しておく必要があります。運転資金を圧縮するために、まずはほかのブルワリーから取り寄せたものをゲストビールとして提供する飲食店をスタートさせておくのも一つの方法です。
ブルワリーの開業にはさまざまな費用がかかります。代表的な費用の種類と、できるだけ節約するためのコツを紹介します。
ブルワリーを開業するためには、製造場所となる物件を借りたり取得したりしなければなりません。賃貸契約を結ぶ際は、家賃以外に仲介手数料・保証金・礼金などがかかります。
物件を取得する場合も、取得時やローン契約時にさまざまな初期費用が必要です。賃貸もしくは購入のどちらを選ぶにしても、物件の規模によっては開業時に100万円以上かかるケースもあります。
物件にかかる初期費用を抑えたいなら、10坪以下の小規模物件を選ぶのがおすすめです。内装や設備を引き継げる居抜き物件を見つけられれば、より費用を安くできるでしょう。
こだわりのビールを製造・販売する場所では、内装にもこだわりたいものです。ただし、内装を全て業者に任せてしまうと、費用が高額になってしまうケースが少なくありません。
DIYに自信があるなら、できる限り自分で内装を行うことで内装費を節約できます。内装業者と相談して部分的に安価な資材を使うなど、節約するための工夫を凝らすのもおすすめです。
DIYが不慣れな場合は、無理に自分で手掛けるとセンスのない内装になりかねません。安価な資材を導入し過ぎた場合、見た目が安っぽいお店になりやすい点にも注意が必要です。
ブルワリーの開業時には、製造場や店舗だけでなく、ビールの製造にも費用がかかります。具体的にどのような費用が発生するのかを押さえておきましょう。
オリジナルビールを製造する場合は、酒税法に基づき酒類製造免許を受けなければなりません。酒類製造免許の取得には、登録免許税15万円が課税されます。
食品衛生法に基づく営業許可も必要です。酒類製造業の営業許可取得時には約1万9000円、飲食店営業の場合は約1万8000円の費用が発生します。
免許や許可を受ける手続きを行政書士に依頼する場合は、上記の法定費用とは別に、行政書士に支払う報酬もかかります。飲食店営業許可手続きの代行なら約4万円、酒類の製造・販売にかかる免許や許可の場合は約10万~17万円が報酬の目安です。
ビール醸造のための設備にも費用がかかります。
麦汁を造るタンクやアルコール発酵を促すタンクなど、ビール造りには複数のステンレス製タンクが不可欠です。一般的に、ビール醸造に必要なタンクをそろえるには、1000万円〜2000万円ほどの費用がかかります。タンクや配管を機能的に配置するための設計にも、プロの知恵が必要です。
冷蔵庫・樽洗浄機・モルト粉砕機など、醸造に必要な機器類にも費用が発生します。配管工事費や電気工事費も準備しておきましょう。
開業資金が不足しているなら、資金を集めるための方法を考える必要があります。ブルワリー開業でも利用しやすい、日本政策金融公庫の融資を検討するのがおすすめです。
ブルワリーの開業資金を調達するなら、日本政策金融公庫が実施する『国民生活事業』の融資を活用しましょう。国民生活事業では、小規模事業者でも利用しやすい融資を行っています。
小口融資を主体としており、平均融資額は約698万円です。融資先に地域密着型の小規模事業者が多い点や、担保に依存しない融資を推進している点も特徴です。
おすすめの資金調達方法としては、クラウドファンディングも挙げられます。ビール造りへの熱意をアピールし、ビールを楽しめるリターンを設定すれば、多くの賛同を得やすくなるでしょう。
ただし、目標金額に達するまで時間がかかりやすい点に注意が必要です。日本政策金融公庫は約1カ月で資金を調達できるのに対し、クラウドファンディングは2カ月以上かかることもあります。
日本政策金融公庫の融資は、自己資金が多いほど審査で有利になります。ある程度の資金を用意できている事業者なら、貸し倒れのリスクが低いと判断されやすくなるためです。
日本政策金融公庫の実態調査を見ても、開業時の自己資金不足を反省点に挙げている事業者が多いことがわかります。融資を受ける際は、できるだけ多くの自己資金を用意しましょう。
融資を成功させるためには、綿密な事業計画も必要です。ビール製造後の卸し先や資金使途などを明確に示せれば、評価が高くなり高額融資も受けやすくなるでしょう。
事業計画書には、『創業の動機』『経営者の略歴』『商品やサービスの魅力』『仕入先・販売先』『借入状況』『必要な資金』などを盛り込みます。資料を豊富に添付し、事業実現性の高さをアピールすることが重要です。
ブルワリー開業を成功させるために意識しておきたいポイントを解説します。集客見込みや初期費用の回収目安を考えておくと同時に、価値あるビールを生み出すために努力することが大切です。
ビール製造を軌道に乗せるためには、集客の見込みを考えることが重要です。自家醸造のビールに絞ってアピールすれば、開業直後からファンを獲得しやすくなるでしょう。
初期費用を何年で回収できるか、シミュレーションを行っておくことも大切です。『投資回収率(ROI)』を用いて回収年数を概算すれば、新たな事業展開の計画も立てやすくなります。
開業当初の資金繰りに不安があるなら、『シェアリングブルワリー』の活用も検討してみましょう。シェアリングブルワリーとは、ビール職人が共同で利用できるブルワリーのことです。
自前のブルワリーを持たずに済むため、ビール造りにかかる初期費用を大幅に抑えられます。期間限定ビールなどを開発したい場合に、小回りを利かせられる点もメリットです。
マイクロブルワリーで提供されるクラフトビールの価格帯は、500~700円程度に設定されるのが一般的です。大規模な醸造所で造られるビールに比べれば、価格は高めになります。
しかし、より多くの利益を上げるためには、さらに高価格で売ることも意識しなければならないでしょう。競合との価格差を生み出せなければ、数あるクラフトビールの一つに留まってしまいます。
少量醸造のメリットを生かして価値あるビールを造れれば、価格を高くしても飲み手に満足してもらえます。飲食店を併設する場合は、客単価を上げるための工夫を凝らすことも重要です。
ブルワリー開業にはある程度の初期資金が必要です。ビールの製造には時間がかかるため、開業当初の運転資金も意識しておかなければなりません。
日本政策金融公庫の融資は、小規模事業者でも資金調達しやすい点がメリットです。自己資金と綿密な事業計画を用意し、開業準備を計画的に進めましょう。
クラフトビールはギフトにおすすめ。選び方とおしゃれなブランド6選
おしゃれでおいしいクラフトビールを大切な人に贈りたいなら、ギフトにふさわしいビールを選ぶのがおすすめです。人気のビールについて知識を身に付ければ、自分のお店でビールを造る際にも役立つでしょう。ギフトに最適なおすすめのブランドを紹介します。
クラフトビールは、大切な人への贈り物として人気があります。どのビールをギフトにするか迷ったら、違いを楽しめる飲み比べセットを選びましょう。
日本では、クラフトビールに明確な定義がありません。比較的小規模の醸造所で、伝統的な製法にのっとり、造り手のこだわりが反映された個性的なビールを、一般的にクラフトビールと呼んでいます。
特徴の違いを楽しめる点では地ビールと同じです。クラフトビールには、地ビールのように地元の特産物を使って醸造しているものもあります。
酒類のうち、ギフトとして多く選ばれているのもクラフトビールです。普段から飲んでいる定番ビールやワインと違い、特別な印象を与えて喜んでもらえるという理由から、贈り物として人気があるのです。
クラフトビールには数多くの種類があり、色や香りがそれぞれ違います。飲み比べを楽しめるビールセットが、大切な人に贈るギフトとして人気です。
ビールの色には、原料に使っている麦芽の色が反映されます。淡い麦わら色から黒色までさまざまな色に分かれるため、色の違うビールを贈れば見た目でも楽しんでもらえるでしょう。
ビールごとに個性的な香りを堪能できる点も、クラフトビールの魅力です。柑橘系の香りやスパイシーな香りなど、原料や製法の違いで多種多様な香りを生み出しています。
ビールの味わいや香りは好みが分かれるため、飲み比べができるギフトを贈れば、相手が好みのビールを発見するきっかけにもなるでしょう。
クラフトビールをギフトとして選ぶ際に着目したいポイントを紹介します。以下に挙げる選び方を参考にして、相手に喜ばれるビールを探しましょう。
ビールギフトを選ぶ際は、ビアスタイルを意識しましょう。ビアスタイルとは、原材料の種類や組み合わせ、醸造方法などを基準とするビールの分類法です。
ビアスタイルは、発酵方法によりエール系とラガー系の2種類に大別できます。上面発酵で造るビールがエール系、下面発酵で造るビールがラガー系です。
エール系のビアスタイルには、ペールエール・IPA・ヴァイツェン・スタウトなどがあります。豊かな香りと深い味わいが、エール系に共通する主な特徴です。
ラガー系の代表的なビアスタイルであるピルスナーは、日本で流通するビールのほとんどを占めています。のどごしを楽しめるすっきりとした飲みやすさが特徴です。
それぞれのビールには好相性の料理があります。ギフトを贈る相手の好きな料理が分かっているなら、その料理と合うビールを選ぶのも一つの方法です。
料理との相性を意識して選ぶ際は、料理とビールの発祥国を調べてみましょう。発祥国が同じ料理とビールなら、組み合わせで失敗する可能性は低くなります。
好きな料理がローストビーフであればイギリス生まれの『ポーター』、ハンバーガーが好きなら『アメリカンラガー』などがおすすめです。好きな料理が分からない場合は、どのような料理にも合わせやすい『ペールエール』にするとよいでしょう。
ギフトとして贈るビールを選ぶ際は、ビールごとの特徴を確認することも大切です。苦味や甘味などは、ビールによって大きな差があります。
ビールの苦味を示す数値が『IBU』です。IBUの数値が大きいほど、強い苦味を感じやすくなります。一般的なビールのIBU約15~30を基準に、苦味の強さを判断するとよいでしょう。
ただし、苦味の感じ方には個人差があり、苦味以外の要素も苦味の感じ方に影響を与えます。ビールの特徴をきちんと把握したい場合は、商品紹介をしっかり読むことが重要です。お店の人に尋ねれば、より分かりやすく説明してもらえるでしょう。
ビールギフトを選ぶ際は、相手に喜んでもらえるように、ポイントを押さえて商品を探しましょう。普通の贈り物と差別化できるため、より特別感が増します。
クラフトビールの形状は、缶タイプと瓶タイプに大きく分けられます。より相手に喜ばれるギフトにしたい場合は、高級感のある瓶タイプを選ぶのがおすすめです。
ラベルがおしゃれな瓶ビールなら、空になった後もインテリアとして使ってもらえるかもしれません。クラフトビールのラベルは、造り手がこだわった個性的なデザインが多いのもポイントです。
海外のビールは瓶タイプが定番ですが、国内のクラフトビールも数多くの銘柄が瓶で販売されています。瓶自体の形状にも注目し、見た目で楽しんでもらえるギフトを選んでみましょう。
ビールギフトには、定番の銘柄をそろえたセットとは別に、プレミアムビールを贈れるセットも用意されています。プレミアムビールとは、通常商品より高価格・高品質で提供されるビールです。
大手メーカーだけでなく、クラフトビールにもプレミアムなタイプを用意しているところがあります。原料にこだわった数量限定商品など、何がプレミアムなのかはブルワリーや銘柄によりさまざまです。
相手にとって大切な日にプレミアムビールを贈れば、特別感をより強く伝えられます。普段お手頃なお酒を飲んでいる人なら、特に喜んでもらえるでしょう。
日本国内で醸造されたクラフトビールのおすすめギフトセットを紹介します。それぞれの特徴や魅力を比較し、購入を検討する際の参考にしましょう。
岩手県盛岡市にある『ベアレン醸造所』は、100年以上前にドイツで製造された設備をそのまま日本に移設したブルワリーです。伝統的なヨーロッパのビールを、当時の設備とレシピで造っています。
ベアレン醸造所のビールセットには、ベアレンビールの中でも定番の銘柄が7種10本入っています。クラシック・シュバルツ・アルト・ヴァイツェンなど、いずれもドイツで伝統的に愛飲されている人気のビールです。
タイプの違うビールがそろっているため、楽しく飲み比べてもらえるでしょう。おしゃれなオリジナルギフト専用箱で配送されます。
サツマイモのビールで有名な『コエドブルワリー』は、埼玉県川越市でさまざまなクラフトビールを造っている醸造所です。個性の追求ではなく、繊細なバランスをとることを醸造哲学としています。
世界にも類を見ないサツマイモのビール『紅赤』は、コエドブルワリーが開発した初めてのビールです。紅赤以外にも、日本的な繊細な感性を反映した幅広い種類のビールを生み出しています。
コエドブルワリーのビールセットには、オリジナルエールの紅赤を含め、主力商品が計6本入っています。コエドビールを飲んだことがない人にもおすすめのギフトです。
『ファーイーストブルーイング』は、2011年に設立されたビール業界のベンチャー企業です。『和食に合うビール』をコンセプトとしたオリジナルビール『馨和(かぐあ)』を製造・販売しています。
ぜいたくなかぐわしさ・ハイアルコール・低炭酸の三つが、馨和を特徴づける大きなポイントです。ミシュランの星付き有名レストランやANAの国際線ファーストクラスに採用された実績もあります。
ビールギフトに馨和を選ぶなら、白ボトルの『Blanc(ブラン)』と赤ボトルの『Rouge(ルージュ)』がセットになったタイプがおすすめです。2種類の味わいを和食と一緒に楽しんでもらえます。
東京都文京区にあるマイクロブルワリー『アウグスビール(AUGUST BEER)』。
主力商品である、『アウグスオリジナル』は、1842年誕生の元祖ピルスナーを深く追及した『原点回帰』ともいえる1本で、世界最古の醸造所である『ヴァイエンシュテファン修道院』のピルスナー酵母が使用されているのが特徴です。
通常のビールは酵母を取り除いた上で出荷されますが、アウグスオリジナルは熱処理やフィルタリングが加えられておらず、旨味の核である酵母がしっかりと生きています。
ボディはコクのあるしっかりとしたタイプで、一口味わうごとに『チェコザーツ産ファインアロマホップ』の華やかな香りと爽やかな苦みが広がります。ABVはやや高めの5.5%です。
その他にも、金賞等をとったベルジャンホワイト、店舗で人気のIPA、アンバーエールなど通販で販売されており、おまかせ6本セットではいずれの味も楽しめます。
クラフトビールのギフトセットを探す際は、海外発のビールもチェックしておきましょう。人気の海外ブルワリーが造るおすすめのギフトを紹介します。
北フランスのジャンランにある『ブラッスリー・デュイック』は、1922年創業の家族経営ブルワリーです。北フランス発祥の伝統的な製法『ビエール・ド・ギャルド』でビールを造り続けています。
ブラッスリー・デュイックの代表銘柄は、ベリーの香りが特徴的な『ジャンラン・フレンチIPA』と、ゆったりとした深いコクのある『ジャンラン・アンバー』です。
異なる味わいの2本がセットになったギフトを選べば、北フランスのクラシックスタイルビールを堪能してもらえるでしょう。瓶の形状やラベルのデザインもおしゃれです。
海外産のプレミアムビールを探しているなら、ハワイでクラフトビールを造っている『コナ・ブリューイング・カンパニー』のビールセットがおすすめです。
ハワイ島で初めてのクラフトビールブルワリーとして1994年に設立された後、2種類のエールと1種類のラガーが誕生しました。この3種類は、現在でも看板商品として人気を集めています。
ビールセットには3種類の定番ビールが3本ずつ入っています。いずれの銘柄も、全米地ビール協会で数々の受賞歴がある名作です。
『シメイ』とは、修道院内に醸造所を持つトラピスト会で造られる『トラピストビール』の中で最も知名度が高いビールです。
トラピストビールは世界11カ所のみで造られていて、シメイはベルギーにあるスクールモン修道院内の天然地下水と農産物を使用しています。高めのアルコール度数と深いコクが特徴の自然熟成ビールです。
トラピストビールのギフトを贈るなら、『シメイ・レッド』『シメイ・ブルー』『シメイ・ホワイト』の3種類をそろえたセットがおすすめです。
シメイ・レッドは、シメイの中で最初に造られたビールです。苦味と甘味をバランスよく味わえます。濃厚かつスパイシーな味わいのシメイ・ブルーと、ホップの効いたドライな口当たりが特徴的なシメイ・ホワイトと組み合わせれば、3本の飲み比べを楽しめます。
厳選したとっておきのクラフトビールは、大切な人に贈る特別なギフトとしておすすめです。何を贈ろうか迷ったら、色や香りの違いを楽しめるように飲み比べが可能なギフトセットを選びましょう。
ビアスタイルや料理との相性、苦味や甘味などに着目して探せば、ギフト選びで失敗しにくくなります。人気の銘柄をチェックし、相手が喜びそうなクラフトビールを選んでみましょう。
ビール製造、販売のための免許の種類。発泡酒製造免許を受けるには
オリジナルビールを販売する場合、状況に合わせて許可を受ける必要があります。発泡酒製造免許を取得すれば、小規模店舗でビールを製造・販売するハードルを下げることが可能です。ビール作りや販売に必要な免許について、理解を深めておきましょう。
オリジナルビールを製造するためには、ビールまたは発泡酒の製造免許が必要です。それぞれの免許の違いや、小規模店舗が一般的に目指す免許について解説します。
ビールをはじめとする酒類の製造には、酒税法で定められた免許が必要です。酒類の品目や製造場ごとに所轄の税務署へ申請し、製造免許を受けなければなりません。
販売予定がない自家用の酒類を作る場合も、一部の酒類以外は無免許で製造すると酒税法違反行為になります。無免許で製造された酒類と知りながら、その酒類を譲り受けたり所持したりする行為も同様です。
製造免許を受けるには品目ごとに最低製造数量基準(製造免許を受けた後1年間の製造見込数量が一定の数量に達しているかどうか)を満たしている必要があります。さらに拒否要件が設けられており、該当する場合は免許を受けられません。
ビールの製造を検討するなら、まずはこれらを確認しておく必要があります。
2018年の酒税法改正以前、ビールの定義は『原料に対する麦芽比率が約67%(2/3)以上』であった上、副原料も限られた種類のものしか認められていませんでした。しかし、法改正によりビールの定義は『麦芽比率50%以上』となり、使用可能な副原料も増えています。
一方で、発泡酒の定義は『麦芽比率50%未満』となりました。この変更により、これまで「発泡酒」と表記されていたものでも『ビール』と表記できるケースもでてきました。発泡酒という分類に対してマイナスのイメージを持つ消費者も少なくないため、この改正には良い部分もあります。
しかしこれから製造免許を取得したいと考える人は、『ビール製造免許』のハードルが高いことを考慮しておく必要があります。
発泡酒製造免許に必要な最低製造数量基準が『年間6kl以上』であるのに対し、ビールの製造免許には『年間60kl以上』が求められます。
たとえば1本330mlのビールなら、60000000ml÷330ml÷365日=約500本を毎日売り続けなければ、仮に規定の製造見込数を達成しても経営が成り立ちません。
そのため、オリジナルビールの製造・販売を予定している小規模店舗は『発泡酒製造免許』の取得を目指すのが一般的です。
実際に、2018年の酒税法改正直前には、多くの小規模店舗が発泡酒製造免許を駆け込みで取得しています。年間60kl以上のビール製造見込が立てられなかったためです。
発泡酒製造免許なら、年間6kl以上の製造見込を立てられれば製造免許が付与されます。製造する酒類の麦芽比率が50%以上でも、副原料の使用を麦芽比5%以上にしたり、ビールでは認められない副原料を用いたりすれば対応可能です。
参考:酒税法|国税庁
参考:ビール・発泡酒に関するもの|国税庁
免許取得時に必要な書類や申請方法を押さえておけば、手続きをスムーズに進められるでしょう。行政書士に申請代行を依頼することも可能です。
発泡酒製造免許を取得するためには、製造場の所在地を管轄する税務署へ申請書を提出しなければなりません。申請の際は、製造免許申請書と併せて、主に次の添付書類が必要です。
申請書と添付書類を作成し、税務署に持参または送付すれば受け付けてもらえます。申請に手数料はかかりませんが、免許を一つ取得するごとに登録免許税の納税が必要です。
自分で手続きする時間がない場合や、手続きするのが面倒な場合は、行政書士へ手続きを依頼すれば手間や時間を省けます。専門家に任せることでミスを防げる点もメリットです。
プロに申請を代行してもらう場合の費用相場は、35万~90万円が目安です。この費用には、登録免許税額15万円も含まれます。
行政書士に支払う報酬は、行政書士により大きく異なります。相見積もりを取った上で、費用の内訳を細かく確認しながら比較するのがおすすめです。
酒類を製造・販売する際は、発泡酒製造免許以外にも必要となる許可があります。ケース別に取得を求められる許可の種類を把握しておきましょう。
自社で酒類を製造・販売するためには、酒類製造業の営業許可を受けなければなりません。営業許可とは、国や自治体が定めたルールを守って営業していることを示すものです。
酒類製造業の営業許可を取得する際は、営業設備の大要・配置図を持参の上、所轄の保健所に相談しましょう。施設ごとに食品衛生責任者を配置する必要もあります。
貯水槽使用水や井戸水などを使う場合は、水質検査も行っておかなければなりません。食品衛生責任者と水質検査は、営業許可を得るのに必須なものであるため、事前に準備しておきましょう。
酒類製造業の営業許可を取得する店舗に飲食店を併設する場合は、飲食店営業許可を取得しなければなりません。保健所に申請し検査に合格すれば、飲食店営業許可の取得が可能です。
飲食店営業許可を取得するためには、食品衛生責任者を定める必要があります。食品衛生責任者は、食品の製造・販売を行う全ての店舗に、1人ずつ配置しなければなりません。
申請時に提出を求められる主な書類は、営業許可申請書・施設の図面・法人の登記事項証明書・食品衛生責任者資格証明・水質検査書です。施設が完成する10日ほど前に、必要書類を持参の上申請しましょう。
酒類を持ち帰り用として消費者に販売する場合は、『一般酒類小売業免許』を取得する必要があります。一般酒類小売業免許は、税務署に申請を行って取得できる免許です。
製造場以外の場所で酒類を別の容器に詰め替えて販売する場合は、『酒類の詰替え届出書』を税務署に提出しなければなりません。詰め替え容器には、販売業者・製造場所・製造者の情報を表示する義務があります。
期間限定で酒類の小売を行う際は、販売予定場所の所轄税務署へ『期限付酒類小売業免許』の取得申請を行いましょう。一時的なテイクアウトサービスを導入したいケースで必要な手続きです。
自社でオリジナルビールを製造・販売するためには、税務署に申請して製造免許を受ける必要があります。小規模店舗は発泡酒製造免許の取得を目指すのが一般的です。
飲食店を併設したり、持ち帰り用として酒類を販売したりする場合は、状況に応じて製造免許以外にも許可を得なければなりません。営業スタイルに適した許可の種類や取得方法を、きちんと理解しておきましょう。
クラフトビールで人気のIPA。6種を飲み比べて知りたい苦味や特徴
IPAは強い苦味と香りが特徴的なクラフトビールです。ホップの種類や使い方により、香りや味わいが大きく変わるため、初心者から上級者まで楽しめるでしょう。IPAの歴史や飲み方、代表的な種類ごとの苦味や特徴を紹介します。
IPAとはどのようなビアスタイルを指すのでしょうか。IPAの基礎知識と、味わいを堪能するために意識したいポイントを見てみましょう。
IPAとは、『インディア・ペールエール(India Pale Ale)』を略した言葉です。イギリス発祥のビアスタイル『ペールエール』の一種であり、世界中で人気を集めています。
インドがイギリスの植民地だった時代、大勢のイギリス人が本国からインドに移住したため、イギリスの伝統的なペールエールをインドまで船で運ぶ必要に迫られました。しかし、長い航海の間に激しい温度変化にさらされ、ペールエールが腐ってしまうという問題が発生します。
そこで、優れた防腐作用を持つホップを通常よりも大量に投入し、アルコール度数も高くして品質保持を試みたところ、インドに届いてからもおいしく飲めたといいます。
こうして誕生したホップの強い香りと苦味のあるビールは後にイギリス本国でも話題になり、『IPA』というスタイルとして広く受け入れられていくことになるのです。
IPAの味の特徴は、大量に使用されたホップの強い香りと苦味です。一般的なビールと比べ、アルコール度数も高めに醸造されています。
ホップの香りは温度が高いほど華やぐため、冷蔵庫から出して15分程度経過した12~14℃がIPAの飲み頃です。冷やしすぎると苦味が強調され、IPA本来の味わいを堪能できません。
IPAの個性的な香りと鮮烈な苦味は、味の濃い料理とよく合います。しょうゆベースの肉料理や香りの強い魚料理などと一緒に楽しむのがおすすめです。
IPAにはいくつかの種類があり、香りや味わいも大きく異なります。強い苦味が気になる初心者には、以下に挙げる苦すぎないIPAがおすすめです。
IPAの強い苦味に不安を感じる人は、『イングリッシュIPA』からはじめてみましょう。
IPA発祥の地であるイギリス生まれのイングリッシュIPAは、ヨーロッパ産ホップによる紅茶のような香りと、刺激を抑えた味わい深い苦味が特徴です。トーストのようなモルト感も堪能できるでしょう。
アルコール度数を低めに醸造したイングリッシュIPAも存在します。刺激を求めて飲むビールというよりは、ゆっくりと味わいながら飲むタイプのビールです。
抑えた苦味とソフトな口当たりを求める初心者には『ヘイジーIPA』もおすすめです。2016年ごろにアメリカ北東部・ニューイングランド地方から広まったためニューイングランドスタイルIPAとも呼ばれ、フルーティーな香りと味わいを楽しめます。
ホップの苦味を抑えて香りのみを引き出す特殊製法で造られており、華やかでフルーティーなホップの香りを存分に味わえます。やわらかくなめらかな口当たりも魅力です。
ヘイジーIPAの名称は、濁り(ヘイジー)から付けられています。IPA本来の濁りのない琥珀色とは違う、濁った外観もヘイジーIPAの特徴なのです。
『セッションIPA』は、IPAの個性を維持しつつ、さらに飲みやすくしたビアスタイルです。アルコール度数を5%以下に抑えている上、ホップの使用量も減らしています。
通常のIPAではアルコール度数が高すぎると感じる人や、IPAの強烈な苦味を少し抑えて飲みたい人におすすめです。ホップの華やかな香りや程よい苦味はそのまま堪能できます。
アルコール度数が低めに抑えられているため、飲み続けやすい点も魅力です。夏場の暑い時期に冷やしておけば、小難しい飲み方を意識せずにゴクゴクと飲み干せます。
IPAの強烈な苦味を楽しみたい人には、以下に挙げるビアスタイルがおすすめです。それぞれの特徴や魅力を押さえておきましょう。
華やかなホップの香りを大きな特徴とするビアスタイルが『アメリカンIPA』です。アロマホップの代表格『カスケード』を使用し、豊かな柑橘系アロマを楽しめます。
カスケードは、1970年代にアメリカでリリースされたホップの品種です。アメリカンクラフトビールの方向性を決定づけたホップであり、柑橘系とシトラスが混ざったようなさわやかな香りが特徴です。
アメリカの西海岸で造られるアメリカンIPAは、ウェストコーストIPAとも呼ばれています。ホップの苦味やフレイバーが強く、鮮烈な柑橘系の香りを放つのが特徴です。
『ベルジャンIPA』は、ベルギービール酵母を原料に使用したIPAです。アメリカで生まれたビアスタイルであり、アメリカのクラフトビール市場におけるトレンドになっています。
ベルギービール酵母特有の甘くフルーティーな香りは、ホップ由来の香りとはタイプが異なります。柑橘系を思わせるさわやかな香りがホップの特徴なのに対し、ベルギービール酵母は洋梨やキャンディーなどのようなダイレクトな甘さを感じさせます。
苦味を示す数値『IBU』が一般的なビールよりかなり高いことも特徴です。ホップの強烈な苦味が酵母の甘い香りを引き立てる、独特の風味を楽しめるでしょう。
ホップを大量に使用するIPAの中でも、さらに多くのホップを使うビアスタイルが『ダブルIPA』です。『インペリアルIPA』や『エクストラIPA』とも呼ばれます。
日本の一般的なラガービールのIBUは約16~25、一般的なIPAは約40~65です。一方、ダブルIPAのIBUは基本的に70を超え、銘柄によっては100以上のものもあります。
アルコール度数が高い点も特徴です。一般的なIPAのアルコール度数が5~7%であるのに対し、ダブルIPAでは10%を超えるケースもあります。
ホップの華やかな香りと強烈な苦味が口の中にガツンと広がり、アルコール度数も高いダブルIPAは、骨太の味わいをしっかりと楽しめる上級者向けのビアスタイルです。
IPAとは、ビールの原料の一つであるホップを大量に使って醸造され、強い苦味と香りを楽しめるビアスタイルです。
肉料理や中華料理、スパイシーな料理などと好相性です。冷やしすぎず、常温より少し冷たいくらいの温度で飲めば、ホップの香りをより堪能できます。特徴の異なるさまざまなIPAを飲み比べて、味と香りを楽しみながら研究してみましょう。
クラフトビールの造り方。原材料、発酵のさせ方で味わいが変化
クラフトビールは原材料の選び方や組み合わせ、発酵方法で風味が変化します。ビール職人は造りたいビールを明確にイメージした上で全ての工程に取り組んでいるのです。ビール完成までの流れや酒造りに欠かせない免許の取得などについて理解を深めましょう。
1994年に酒税法が改正されて以降、個性的なクラフトビールを造る醸造所が増えています。お酒を製造したり、販売したりするにはいくつものプロセスを経る必要があります。まずは、クラフトビールについて理解を深めるとともに、どんな商品を提供したいかを明確にしましょう。
クラフトビールの定義はさまざまですが、一言で言えば『小規模な醸造所で製造される職人技のビール』です。
アメリカの小規模醸造所の業界集団『ブルワーズ・アソシエーション』は、クラフトビールの定義として『小規模』『独立している』『伝統的な原料・製法で製造している』を挙げています。
日本においては、大手ビールメーカー以外で造られる個性豊かな地ビールを指すことが多いようですが、近年はクラフトビールを手掛ける大手メーカーが登場しているのが実情です。
醸造所の規模や製造方法にかかわらず、『ブルワー(造り手)がこだわり抜いて造ったビール』がクラフトビールといえるでしょう。
若者のビール離れが進む中においても、クラフトビールの人気は右肩上がりです。『おしゃれ』というイメージを持つ人が多く、「自分の店でおしゃれで個性的なクラフトビールを扱ってみたい」という店舗経営者も増えています。
クラフトビールを扱う際に重要なことは、自分のブランドコンセプトや方向性を明確にすることです。
酒税法改正では、麦芽比率の下限が100 分の 50 まで引き下げられると同時に、使用できる副原料に『果実』や『香味料』が追加されました。改正によって、ブルワーは今まで以上に個性やこだわりを表現しやすくなったといえます。
自分たちの方向性やコンセプトを策定した後は、商品に反映させるための具体的な案を考えていきましょう。
ビールを造るには、酒税法に基づいた『酒類製造免許』の取得が必要です。具体的には、製造場の所在地の所轄税務署長に申請をして製造する酒類の品目別・製造場ごとに製造許可をもらいます。税務署で審査する主な項目は以下の通りです。
『ビールの最低製造数量基準』は、清酒と同じ年間60klです。以前は2000klでしたが、酒税法改正で大幅な引き下げが行われました。
酒税法第10条の『製造免許の拒否要件』に当てはまる場合、免許が付与されない可能性があるため、事前によく確認をしておきましょう。酒類製造免許の登録免許税は1品目あたり15万円です。
『酒類製造免許』の取得は設備投資にかかる費用が高く、飲食店を中心とした小規模醸造所(マイクロブルワリー)にとってはかなりハードルが高いのが現状です。
年間60klが最低製造数量の『酒類製造免許』に対して、『発泡酒免許』は年間6kl以上の製造が要件となり、小さなスペースで醸造可能になるため小規模なブルワリーにとって最適な免許になりました。クラフトビールブーム、クラフトビールを専門にするお店が近年増えたのも、酒税法の規制緩和が大きなきっかけになったのです。
全国の醸造所ではブルワーが自分なりのこだわりを持ってビール造りに励んでいます。そのこだわりが現れるのが『原料の選定』です。必要な材料はごくシンプルですが、組み合わせ方は無限に存在します。
クラフトビールの原料は、水・酵母・麦芽・ホップの四つが基本です。このほかに、『副原料』として、麦・米・コーン・こうりゃん・馬鈴薯・スターチ(でんぷん)・糖類・着色料・香味料・果物の添加が可能です。
原料には産地や種類があり、組み合わせ方や選び方によって仕上がりが大きく変化します。造りたいビールを明確にイメージして原料の選定を行いましょう。
例えば、ビールの90%を占める水には『軟水』と『硬水』があり、ミネラルの含有量が異なります。酵母の活性に与える影響や飲み口が変わるため、原料のおいしさを引き出せるのはどの水かをしっかり見極める必要があるのです。
『ホップ』は、アサ科のつる性多年性植物です。ホップの雌株(受粉前)には『毬花』があり、中の『ルプリン』がビールに独特の苦味や香りを与えます。
ホップの種類は全世界に100種類以上あるといわれていますが、使用目的によって、苦味を付ける『ビタリングホップ』と香りを与える『アロマホップ』に大別されます。
ビタリングホップの代表格といえば、ドイツ産の『マグナム』や、アメリカ産の『シムコ―』、オーストラリア産の『ギャラクシー』です。
アロマホップとしては、爽やかなシトラス香のある『シトラ』やマンゴーやパインのようなフルーティさが自慢の『モザイク』などがよく使われます。
ビール造りは、『製麦』→『仕込み』→『発酵』→『貯酒』という流れで行われます。最初に行う『 製麦(せいばく)』と『仕込み』は、ビールのもとをつくる重要な工程です。実際にどのように行うのかをみていきましょう。
『製麦』とは、収穫した大麦を発芽させ、『麦芽』をつくることを指します。機械を使ってダストや石、砕麦などを取り除いた後、浸麦槽で麦に水分を含ませて、発芽室で発芽を促すのが最初のステップです。
発芽中の大麦は『緑麦芽』と呼ばれます。自らの酵素でタンパク質やでんぷんを分解するため、粒は指で潰せるほど柔らかくなります。浸麦・発芽で軟化するプロセスは『溶け』と呼ぶことも覚えておきましょう。
その後、発芽を止めて醸造しやすい状態にする『焙燥』や『焙煎』に入ります。熱風で焙燥させることで、ビール独特の色・香りが引き出されます。
麦芽のでんぷんはグルコースが何個もつながった状態です。このままでは分子が大きすぎてビール酵母が細胞内に取り込めないため、でんぷんの構造を小さくする必要があります。
砕いた麦芽と副原料を混ぜ合わせた後、お湯に60~90分間浸して粥のような状態にします。すると、でんぷんが酵素の力で『糖』に分解され、酵母が取り込める状態になるのです。
その後、麦汁を濾過して煮沸し、何回かに分けて原料のホップを加えます。煮沸の主な目的は、濁りの原因となるタンパク質の凝固や殺菌、不快な匂い成分の除去です。香りや苦味を付与したり、泡持ちをよくしたりする役目もあります。
ビール造りではビール酵母による『発酵』が欠かせません。酵母が麦汁内の『糖』を取り入れ、アルコールと炭酸ガスを排出することで、程よいアルコールやビール特有のシュワシュワ感が生まれるのです。
続いて、煮沸した麦汁に酵母を加え、発酵を促すプロセスに入ります。『発酵』とは、酵母によって麦汁中に含まれる糖分が『アルコール』と『炭酸ガス』に分解される生化学反応のことです。発酵の副産物として『エステル』と呼ばれる揮発性の香り成分も生じます。
ビールの風味は『発酵の温度』によって左右されるため、冷媒システムなどによって発酵タンクの温度管理を行いながら、発酵を促していくのが一般的です。
発酵の種類は、15~22℃の高温で発酵を行う『上面発酵』と、5~12℃の低温による『下面発酵』に大別されます。名称は、酵母の働き方に由来しています。
発酵の主役である『酵母』の正体は『微生物』です。ビール造りに貢献する主なビール酵母は『ラガー酵母』と『エール酵母』で、それぞれに個性があります。
ラガー酵母は、発酵が終わると沈降することから『下面発酵酵母』と呼ばれます。発酵期間は7~10日ほどで、低温で活性化するのが特徴です。
一方、エール酵母は、発酵過程で浮上して表面に膜を造ることから『上面発酵酵母』と呼ばれます。発酵期間は3~4日と短めです。
ラガー酵母による『ラガービール』は爽快な喉越しとすっきりとした味わいが魅力なのに対し、『エールビール』には豊かな香りとコクがあります。
発酵後のビールは味も香りも未熟な『若者』です。熟成というプロセスを経ることで、味わい深いビールへと変化していきます。上面発酵(エール)と下面発酵(ラガー)とでは、熟成方法や期間が異なります。
アルコールや炭酸ガスを含んだ発酵液は『若(わか)ビール』と呼ばれます。味に深みがなく香りも未熟なため、熟成によって『未熟な香味の原因物質(オフフレーバー)』を低減させる『貯蔵(lager)』を行います。
『ラガービール(lager beer)』という名称は、『貯蔵(lager)』が由来です。下面発酵酵母によるビールは、上面発酵酵母よりも未熟な香味の原因物質が多く、低温でじっくり熟成させる必要があるのです。
ビールを貯蔵タンクの中で熟成すると次第に風味や香りのバランスが整い、澄んだ液体へと変化していきます。
熟成を進めるために、若ビールを貯蔵タンクに移します。貯蔵タンクに移し替えることで、沈んでいた酵母が再びビール中に広がり、熟成中も『後発酵(二次発酵)』が進行します。後発酵においては、若ビールの中に『適量の酵母を含んだ発酵性の成分』が残っていることが重要です。
熟成期間は下面発酵が約1カ月、上面発酵は約2週間です。常温で発酵させる上面発酵ビールは未熟臭物質が少ないため、それほど長い時間を要しません。ただし、『バーレイワイン(上面発酵)』は半年~数年の熟成が必要な『長期熟成型』です。
熟成終了後、無濾過ビールはそのまま樽詰めをしてお店で提供できます。濾過が必要な場合は濾過器で過剰な酵母を取り除いてから樽詰めを行います。
原料の選び方や組み合わせ方、醸造方法の違いで、唯一無二のクラフトビールが完成します。ブルワーは「こんなビールが造りたい」という明確なイメージを持ち、それを再現するためのさまざまな試行錯誤を繰り返しているのです。
クラフトビールを製造するには、酒類製造免許が必要です。製造数量基準や製造技術、設備の基準を全て満たさなければならないため、準備には時間がかかります。クラフトビールの製造や導入を検討している人はしっかりとプランニングを行いましょう。
クラフトビールと地ビールとの違いは?ビアスタイルとは何か
職人のこだわりが色濃く反映されるクラフトビールには、数多くの種類があります。それぞれの違いを自分で見つける面白さに気づけば、ビールの奥深さにも触れられるでしょう。地ビール・クラフトビール・発泡酒・ビアスタイルなどの意味を解説します。
クラフトビールは、日本でどのように広まっていったのでしょうか。誕生するまでの歴史を見てみましょう。
1994年の酒税法改正により、ビールを醸造する免許の取得条件が大幅に緩和されました。日本全国に小規模醸造所が数多く誕生し、観光地を中心に多種多様なビールが売り出されていきます。
これらの小規模醸造所が造っていたビールは、『地ビール』と呼ばれて人気を集めました。多様性と個性を特徴とした地ビールは、地域を象徴するものとして町おこしの役割も果たします。
しかし、地域の特産物を無理に使用したり醸造技術が伴わなかったりするものも少なくなかったため、品質の悪さを指摘されるようになります。徐々に評判が落ちていき、地ビールは衰退していきました。
2010年ごろになると、小規模醸造所の造るビールが再び注目を集め始めます。特産品の域を超えられなかった地ビールでの反省を生かし、こだわりの強いビールとして販売したのです。
地ビールとの差別化を図るために、名称も『クラフトビール』と名づけられました。豊富な種類や希少価値の高さ、飲みやすさなどが評価され、クラフトビールは全国で人気を集めていきます。
世界有数のビール大国ベルギーのクラフトビール造りと似ている点も、日本で人気が定着した理由の一つです。醸造所のサイズが近い上、職人が少量生産で製品を生み出す点も似ています。
ちなみに、クラフトビールは地方だけで造られているわけではありません。東京にも多くのブルワリーが存在します。
一般的なビールとクラフトビールの具体的な違いを定義で確認しましょう。日本で有名な商品も紹介します。
クラフトビールの定義は明確に定められていませんが、craftという英語が技術・工芸・職人技などを意味することからわかるように、『小規模な醸造所が丁寧に造る個性的で多様なビール』と捉えるのが一般的です。
具体的には以下に挙げるような条件を満たすものを指します。
ただし、近年は大手メーカーが市場に参入したり、伝統的な製法を採用したりする動きもみられます。地域色の強さや独自性だけでは分類できなくなっているのが実情です。
日本国内で広く知られている代表的なクラフトビールを覚えておきましょう。『よなよなエール』と『THE軽井沢ビール(クリア)』の二つが有名です。
よなよなエールは、エールビール専門の醸造所で、厳選された素材を使用して造られています。柑橘系のフレッシュな香りとモルトのやさしい甘みが特徴です。
後味のキレと爽快感が特徴的なTHE軽井沢ビール(クリア)は、何杯でも飲めるおいしさを実現しています。アロマホップの香りが楽しめる、口当たりのやさしいビールです。
クラフトビールの税法上の分類について解説します。ビールと発泡酒の違いや、表記に関する法律を知っておきましょう。
ビール造りに必要な基本の原料は、麦芽・ホップ・酵母・水です。発泡酒にも、基本的にビールと同じものを使用します。
原料の量や発酵時間などを調節することで、ビール・発泡酒の味わいやアルコール度数に違いが生まれます。
クラフトビールの味を左右する重要な原料がホップです。ホップを投入するタイミングの違いにより、苦味や香りに違いが生まれます。ホップの扱いを含め、オリジナルレシピにより個性を出している点が、クラフトビールの大きな特徴です。
酒税法におけるビールとは、麦芽の使用比率が50%以上のものを指します。副原料も指定されたものしか使用できません。
一方、麦芽の使用比率が50%未満のものは発泡酒に分類されます。麦芽比率が50%以上でも、副原料の使用量が麦芽比5%以上のものや、ビールで使用できない副原料を使ったものは発泡酒です。
酒税法の分類上、発泡酒に該当するものは、クラフトビールでも発泡酒と表記されます。発泡酒は麦芽比率が低いほど酒税額が安くなるため、優れた品質の商品であっても、安価で買い求められるものがあります。
クラフトビールの理解を深めるためには、ラガーとエールの違いを知っておくことが大切です。さらに細かく分類したビアスタイルについても解説します。
ビールの種類は、発酵方法により『ラガー』と『エール』の二つに大別されます。ラガー酵母(下面発酵酵母)で造るのがラガー、エール酵母(上面発酵酵母)で造るのがエールです。
すっきりとした飲みやすさが特徴のラガーは、苦味とキレのバランスが整っており、のど越しを楽しみながらゴクゴクと飲めます。日本国内に流通するほとんどのビールはラガーです。
一方、麦の香りを抑えたエールは、ホップの豊かな香りと深い味わいを特徴としています。料理に合わせて選ぶ楽しみがあるほか、ビールを単体で味わえることも魅力です。クラフトビールのブルワリーでは、数多くのエールが造られています。
ラガーとエールは、色やビアスタイルにより、さらに細かく分類されます。ビアスタイルとは、原料や醸造方法の違いによるビールの種類です。
主なビアスタイルはラガーとエールで異なります。ラガーを代表するビアスタイルは、淡色でホップの効いた『ピルスナー』です。エールのビアスタイルとしては、フレッシュな香りが特徴的な『ペールエール』が広く知られています。
世界には100種類を超えるビアスタイルがあるとされています。自分の好みを把握したい場合は、ビアスタイルごとの特徴を理解した上で、好きなビアスタイルを知っておくことが重要です。
地ビールの流行と衰退を経て、こだわりの強いビールとして再び人気を集めているのがクラフトビールです。地ビールと同様、醸造場が小規模であることや地域色が強いなどの特徴を持っています。
クラフトビールの中には、原料の違いにより発泡酒に分類されるものもあります。ラガーとエールの違いやビアスタイルの種類についても、理解を深めておきましょう。
マイクロブルワリーを開業するには。必要資金、免許、準備などを解説
クラフトビールのブームが続く中、「小さな醸造所でオリジナルのビールを造りたい」という夢を抱く人も多いでしょう。実際、数坪のスペースで営業をするマイクロブルワリーもたくさんあります。開業に必要な免許や資金調達方法についてを確認しましょう。
日本を含む、世界各国の醸造所では個性豊かなクラフトビールが製造されています。比較的規模の小さな醸造所は『マイクロブルワリー』と呼ばれ、未経験者でも比較的取り組みやすいのがメリットです。
日本における『マイクロブルワリー(Microbrewery)』とは『小規模な醸造所』や『店舗併設型ビール工場』のことです。
『マイクロ』とは、文字通り『小さな』という意味合いがありますが、クラフトビールの本場であるアメリカでは、醸造所の規模ごとに名称が異なります。
事業者団体のブルワーズ・アソシエーションによると、マイクロブルワリーは年間生産量が1万5000バレル(約1750kl)以下で、75%以上が外部販売されている醸造所を指すようです。
さらに小さな醸造所は『ナノブルワリー(Nano brewery)』、レストランに併設された醸造所は『ブルーパブ(Brew Pub)』と呼ばれています。日本とアメリカでは醸造の規模が異なるため、定義がそのまま当てはまるわけではありません。
マイクロブルワリーの経営やビールの開発にはそれなりの知識が必要です。資金があれば誰にでも始められるものの、多くの人に愛される商品ができるかどうかは造り手次第でしょう。開業の前にどんな準備をしておけばよいのでしょうか?
『ビール造りの基本』を学ぶことが最初のステップです。独学で学ぶ人もいますが、製造設備の準備や免許取得、醸造研修までを一貫してサポートするプログラムもあるため、資金が調達できれば比較的スムーズに始められるでしょう。
ビール造りは、『原料の選定』から始まります。原料の大麦から麦芽をつくる『製麦(せいばく)』や、ビール酵母による『発酵』、数週間から数カ月の『貯酒』などを経て、樽詰めされます。
原材料や発酵の仕方によってクラフトビールは味わいが大きく変わるため、ブルワー(造り手)は理想とする商品を明確にイメージする必要があるでしょう。
商業施設やビアホールでクラフトビールを提供する際は、顧客に『おいしい飲み方』を提案しましょう。日本で市販されているビールのほとんどはラガー系のピルスナーですが、クラフトビールのビアスタイル(ビールの種類)は世界に100種類以上あります。
グラスの形状や厚み、脚の有無などによってビールの味わい・香り・泡立ちが変化するため、ビアスタイルに合ったグラスの準備はマストです。
さらに、『ビールと相性のよい料理』を提供することで、両者の個性やおいしさがより引き立ちます。
クラフトビールの製造では『レシピ』が全ての鍵を握ります。ビールの主原料は、水・麦芽・ホップ・酵母の四つが基本で、そこに副原料として、米・コンスターチ・糖類・果物・香辛料などが添加できます。
造り手は自分が理想とするビールをイメージしながら、「どこの原料を使用するか」や「何を掛け合わせるか」を考えていかなければなりません。
ビールのおいしさを決める要素は複数ありますが、中でも『味覚』は非常に重要なポイントです。主に、苦味は『ホップ』、うまみやコクは『麦芽』に左右されるため、原産地や投入量、発酵時間などを調節し、研究を重ねていく必要があります。
地元に根差した地ビールを造るのであれば、地元にまつわるストーリーをどれだけ盛り込めるかがポイントになるでしょう。
マイクロブルワリーを開業する際、初期費用としてどのくらいの資金を用意すればよいのでしょうか?自己資金が少ない場合は、日本政策金融公庫などから融資を受ける手もあります。資金調達をする際は創業計画をしっかりと立てましょう。
ビール造りは、酒類製造免許と醸造設備がなければ始まりません。開業する地域や規模にもよりますが、免許の取得から設備の導入までを代行会社に任せる場合は1200万円~とみておきましょう。
ビール工場として免許登録するためには、ほかのスペースとの区切りが必要です。商業施設内や古民家などで行う場合は『内装費用(一部解体・給排水・電気の引き込みなど)』が別途生じます。家賃や光熱費、材料費などのランニングコストも考慮して資金計画を立てましょう。
開業資金の負担が大きい場合は『融資』を検討しましょう。事業者を支援する政府系金融機関の一つに『日本政策金融公庫』があります。個人企業や小規模企業向けの小口資金の融資も行っているため、一度相談してみるとよいでしょう。
融資を受けるには『創業計画書』や『設備資金』などを用意した上で、ネットや郵送で申し込みをします。
融資審査では「貸した資金がきちんと返済できるのか」が重視されるため、現実性のある収益計画を提示することがポイントです。『販売戦略』や『ターゲット』もできるだけ詳細に記載しましょう。自己資金の目安は、融資金額の3分の1以上です。
マイクロブルワリーの魅力は数坪の小さな物件でも醸造がスタートができることです。従業員を雇わずに1人でお店を回すオーナーもおり、場所と人手の確保に関してはそれほどハードルは高くありません。
日本でも1994年4月に税法が改正され、ビールの製造免許を取得するために年間最低醸造量が2000kl必要だったのが、60klまで大幅に緩和されました。
発泡酒の免許に関しては、年間6kl以上あれば醸造免許が取得できます。業態にもよりますが、5坪程度のスペースなら醸造は十分可能です。実際、日本には3坪ほどのスペースでこぢんまりと営業する小さなブルワリーもあります。
オーナー1人で回すのであれば5~10坪、2人でやるのであれば10坪~を目安にしましょう。狭いスペースに配置できるステンレスタンクも販売されています。
飲食店内の醸造スペースは、排気・排水の設備が共有できるのがメリットです。クラフトビールの提供を始めてから、売上が15%以上アップした店舗も少なくありません。
ビール造りは、製造工程の衛生管理・温度管理が欠かせません。『ビール酵母』はとてもデリケートで、環境の変化で突然変異したり、ほかの酵母が侵入したりすると使い物にならなくなってしまいます。とりわけ培養時は雑菌汚染の可能性が高く、徹底した衛生管理が必要です。
また、仕込み釜や発酵・貯酒タンクは大量の水や薬剤を使い、循環洗浄・殺菌をこまめに行います。ビールの製造の半分は『清掃』といっても過言ではなく、忍耐力と注意力がなければビール造りを続けていくことは難しいかもしれません。
日本では『酒類製造免許』がなければ醸造はできません。店を営業する際は、営業許可の取得や各種届出を忘れずに行います。書類に不備があると認可に時間がかかるため、専門家にサポートを依頼することも考えましょう。
酒類を製造して提供する際にはさまざまな『許可』が必要です。業態によっては届け出が不要なものもありますが、醸造所+飲食店をスタートさせるならば、以下の許可を申請しておきましょう。
『深夜酒類提供飲食店営業開始届出』は深夜0時以降に酒類を提供する場合に限ります。収容人数が30人を超えるときは『防火管理者選任届』を忘れずに提出しましょう。
醸造所を始めるにあたり、もっとも重要なのが『酒類製造免許』です。自家醸造で飲酒をする場合でも、免許なしでの製造はできません。
違反した場合、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるほか、製造した酒類や原料、器具は全て没収となる点に注意しましょう。
酒類製造免許を受けるためには、醸造技術や最低製造量基準、製造設備などの条件を満たした上で、所定の申請書及び添付書類を管轄の税務署に提出します。『酒税法第10条各号に規定する拒否要件』も確認しておきましょう
免許取得は、製造しようとする酒類の品目別ごとに行います。申請に手数料は不要ですが、1件ごとに15万円の『登録免許税』が必要です。
国税庁のWebサイトによると、標準的な処理期間は原則4カ月間です。ただし、初めてビール造りをする場合は免許申請前に要件に合った醸造設備を導入しなければならないため、準備から免許取得までに1年以上の日数を要することがあります。
全くの未経験者は、許認可申請の代行をする専門家のサポートを受けた方が安心でしょう。
ヨーロッパやアメリカと比べると、日本はクラフトビールの後進国です。とはいえ、近年はクラフトビールの需要が急拡大しており、全国の醸造所の数も増加傾向にあります。
小さなマイクロブルワリーであればわずか3、4坪のスペースでもスタートが可能なため、ビジネスとしては取り組みやすいでしょう。
醸造には、醸造設備の導入や酒類製造免許の取得などいくつものプロセスを踏む必要があります。一から自分でやるのは難しいという場合は経験豊富なプロにサポートをお願いするのも一つの手です。
クラフトビールの魅力とは。地ビールとの違いやおいしい飲み方を解説
クラフトビールとは、小規模な醸造所が製造する個性豊かなビールを指します。造り手の個性が味に表れるため、市販のビールとは一味違った新しいビール体験ができるのが魅力です。クラフトビールの特徴や起源、おいしい飲み方について解説します。
日本のビール市場が縮小する中、存在感を増しているのが『クラフトビール』です。アメリカやヨーロッパに比べると日本では提供する店舗がまだまだ少なく、今後の伸びしろが期待されています。
『クラフトビール』の定義は諸説ありますが、『大手メーカー以外の小規模な醸造所が製造するビール』を指すのが一般的です。
日本では1994年に酒税法の改正が行われ、ビール製造免許の取得に必要な最低製造量が年間2000klから60klに引き下げられました。(発泡酒免許は年間6kl以上)この規制緩和を皮切りに、地域密着型の醸造所が次々と誕生したのです。
全国地ビール醸造者協議会ではクラフトビール(地ビール)の特徴として、『大資本のビールから独立している』『伝統的な製法で製造している』『麦汁の製造量が20kl以下』などを挙げています。
地ビールとクラフトビールの明確な違いはありませんが、地域の土産物としての要素が強いものを『地ビール』と呼ぶ傾向があるようです。
参考:「クラフトビール」(地ビール)とは 全国地ビール醸造者協議会
クラフトビールの歴史は1960年代のカリフォルニアに端を発します。フリッツ・メイタグが倒産直前だった醸造所を買い取り、カリフォルニア伝統の『スチームビール』を商品化して大成功を収めました。
その後、ニュー・アルビオン・ブルーイング社やシエラネバダ・ブリューイング社などが追随し、90年までにはカリフォルニアに70近くの醸造所が誕生します。カリフォルニアクラフトビール協会によれば、州内にある醸造所は900を超え、その数は現在も増え続けているそうです。
ニューヨークのブルックリンにも『Brooklyn Brewery』と呼ばれる有名な醸造所があります。80年代後半に設立されて以来、クラフトビールメーカーのパイオニアとして街の活性化に貢献しています。
酒税法改正以降、クラフトビール(地ビール)の魅力が再認識されています。「ビールは自分の好みで自由に選べるもの」ということに初めて気付いた人も多いでしょう。クラフトビールの二つの魅力について解説します。
近年は大手メーカーの参入が増えていますが、小さな醸造所が生み出すクラフトビールは大量生産やオートメーション化とはほぼ無縁です。素材選び・製造工程・パッケージデザインの全てに造り手の思いが反映されるため、唯一無二のビールが体験できるのが大きな魅力でしょう。
旬の素材を取り入れたり、原料そのものを見直したりと、既存のルールに囚われないクラフトビールはどれもユニークでクリエイティブです。
喉越しや爽快感を追求した大手のラガー系ビールと違い、個性的なクラフトビールは『料理』や『グラスの形状』を選びます。ベストなペアリングを見つけるのも楽しみの一つといえるでしょう。
これまでは『地ビール=地域の土産物』というイメージがありましたが、若手の醸造家による『クラフトビール専門店』の増加と共に、「クラフトビールはおしゃれでクオリティが高い」という認識が高まっているようです。
こうした店舗では「とりあえず生ビール頂戴」ではなく、多種多様なクラフトビールのラインナップの中から、季節や気候、その日の気分に合ったものが選べます。
果汁を加えたフルーティなビールやバナナやクローブのような香りのビールもあり、「普段あまりビールは飲まない」という20~30代や女性の間にもファンが広がっています。
世界には100種類以上ものビアスタイルがありますが、店舗で流通しているビールの大半は『ピルスナー』と呼ばれるビールです。日本人は個性豊かなビールの世界をほとんど知らないといっても過言ではありません。代表的なクラフトビールの種類を紹介しましょう。
クラフトビールの火付け役ともいえるのが、『IPA(India Pale Ale)』です。イギリス発祥のビアスタイル『ペールエール』の一種で、強い苦味と香りがガツンと口の中に広がるのが特徴です。
大航海時代、イギリスの植民地であったインドにペールエールを輸送する際に防腐効果のある『ホップ』を大量に投入したのがIPAの始まりと言われています。
IPAと一口にいっても、『アメリカンIPA』や『ダブルIPA』『ニューイングランドIPA』など、多くの種類があります。飲み比べをして自分好みの味を見つけられるのも、IPAならではの魅力でしょう。そのほか、代表的なクラフトビールには以下が挙げられます。
『ビアフライト』とは、ビールの飲み比べができる『テイスティングセット』のことです。グラスのサイズは通常よりも小さめで、一度に3~4種類のビールが味わえます。
自分好みのビールが分からない初心者に対しては、ビアフライトでじっくりとテイスティングをすることをおすすめしましょう。
クラフトビール専門店の中には、各ビールに合ったおつまみや料理を提案しているところもあります。ビアフライトに数種類のおつまみが付いたセットはクラフトビール初心者はもちろん、「ちょっとずついろいろな味を堪能したい」という上級者にも好評です。
ビール好きの中には、「このグラスで飲むビールが一番おいしい」というマイグラスを持っている人がたくさんいます。クラフトビールは『温度』と『グラスの形状』によって、香りが増幅したり、味わいが変わったりするのが特徴です。
クラフトビールには種類ごとに『飲み頃の温度』があります。「ビールはキンキンに冷えたものでなければ」と言う人がいますが、冷やしすぎると本来の味や香りが感じられなくなってしまう種類もあるのです。
例えば、エールビールは8~14℃が飲み頃といわれています。冷たくすれば喉越しや爽快感はアップするものの、エールビールの特徴である豊かな香り(アロマ)やコクは弱くなります。
一方で、すっきりとした苦味と爽快感が特徴の『ピルスナー』は6~8℃前後が飲み頃です。個人の好みにもよりますが、色の濃いビールは『高め』、淡いものは『低め』で飲むのがベターとされています。
ビールの美味さを左右するのは『温度』だけではありません。グラスの形状によって香り・味わい・泡立ちが変化します。
飲み口が狭く、中央部が丸みを帯びた『ワイングラス型』は複雑な香りを内に留めるのが特徴です。脚付きなので手の温度が伝わりにくく、一定のフレッシュさが保たれるというメリットもあります。フルーツエールやスタウト、バーレイワインなどの香りを楽しむビールにぴったりでしょう。
細みで背が高い『タンブラー型』は、豊かな泡立ちや喉越しを楽しむピルスナーに向いています。IPAを提供する際は、卵型のグラスに凹凸のある持ち手が付いた『IPAグラス』を使ってみましょう。鮮烈なホップの香りと苦味がバランスよく感じられます。
クラフトビールの命ともいえるのが『鮮度』です。管理を怠った場合、ビール職人が意図した味や香りの再現が不可能になってしまう恐れがあります。クラフトビールを提供する専門店は、貯蔵タンクの状態をいかにキープするかに力を注がなければなりません。
クラフトビールの先進国であるアメリカやヨーロッパでは、「ビールは醸造場の煙突が見えるところで飲む」のが基本です。
一般的なビールの製造過程では、熟成後に熱処理を加えたり、酵母を濾過したりして発酵を止めるのが通常ですが、クラフトビールの多くは『無濾過』『非加熱処理』で出荷されます。ちょっとした振動や温度でも品質が変化してしまうため、できるだけ早く飲むのがベストです。
クラフトビールを扱う店舗では、醸造仕立ての新鮮さを保つための万全の管理体制が欠かせません。ダメージに弱い生鮮食品であることを忘れずに扱いましょう。
クラフトビールのブームと共に注目を集めているのが、店内に醸造所を併設した『ブルーパブ(Brew Pub)』です。
酵母が生きているクラフトビールは時間や温度、振動などで品質が変化していきますが、こうしたお店では劣化が最小限に抑えられた、鮮度の高いビールが堪能できるのが魅力です。
樽にはタップと呼ばれる注ぎ口が付いており、『タップの数』は『飲めるビールの種類』を表します。こだわりの5タップを提供する店もあれば、10種類以上のタップを常備する店もあり、店舗ごとにスタイルが異なります。
造り手のこだわりやクラフトビールの奥深さに魅了され、「多少値段が高くても、こだわりの一杯が飲みたい」という人が後を絶ちません。
若者のビール離れが進む中、クラフトビール市場が急拡大しているのは、多様さや自由さを求める現代人のライフスタイルにマッチしているからともいえるでしょう。ビール販売量におけるクラフトビールの割合は今後もどんどん増えていくことが予想されます。
クラフトビールにまつわるコラムを始めます
August Interrnationalにて広報などを行っております、取締役の村井と申します。
弊社では、クラフトビールの老舗企業であるアウグスビールのノウハウに基づく、オリジナルクラフトづくりを支援する、マイクロブルワリープロデュースという事業を手掛けております。
既に、アウグスビール、そして我々がご支援させて頂いている店舗様の中には、
・古民家×クラフトビール
・人気の肉バル×クラフトビール
・ラム肉レストラン×クラフトビール
更に今後は、
・印刷向上の新規事業としてのクラフトビール
など、様々な取り組みが進んでおります。
「そもそも、クラフトビールって何なのか?」
「どんなビールが人気なのか?」
「どのようにして、クラフトビールがつくられるのか?」
「本当に自分たちでクラフトビールがつくれるのか?」
といった疑問にお答えするコラムを今後記載していきたいと思います。
それでは、引き続きよろしくお願いいたします。