2021年11月28日 日曜日
クラフトビールで人気のIPA。6種を飲み比べて知りたい苦味や特徴
IPAは強い苦味と香りが特徴的なクラフトビールです。ホップの種類や使い方により、香りや味わいが大きく変わるため、初心者から上級者まで楽しめるでしょう。IPAの歴史や飲み方、代表的な種類ごとの苦味や特徴を紹介します。
ビアスタイル「IPA」とは
IPAとはどのようなビアスタイルを指すのでしょうか。IPAの基礎知識と、味わいを堪能するために意識したいポイントを見てみましょう。
インディア・ペールエールのこと
IPAとは、『インディア・ペールエール(India Pale Ale)』を略した言葉です。イギリス発祥のビアスタイル『ペールエール』の一種であり、世界中で人気を集めています。
インドがイギリスの植民地だった時代、大勢のイギリス人が本国からインドに移住したため、イギリスの伝統的なペールエールをインドまで船で運ぶ必要に迫られました。しかし、長い航海の間に激しい温度変化にさらされ、ペールエールが腐ってしまうという問題が発生します。
そこで、優れた防腐作用を持つホップを通常よりも大量に投入し、アルコール度数も高くして品質保持を試みたところ、インドに届いてからもおいしく飲めたといいます。
こうして誕生したホップの強い香りと苦味のあるビールは後にイギリス本国でも話題になり、『IPA』というスタイルとして広く受け入れられていくことになるのです。
冷やしすぎに注意。味の濃い料理と好相性
IPAの味の特徴は、大量に使用されたホップの強い香りと苦味です。一般的なビールと比べ、アルコール度数も高めに醸造されています。
ホップの香りは温度が高いほど華やぐため、冷蔵庫から出して15分程度経過した12~14℃がIPAの飲み頃です。冷やしすぎると苦味が強調され、IPA本来の味わいを堪能できません。
IPAの個性的な香りと鮮烈な苦味は、味の濃い料理とよく合います。しょうゆベースの肉料理や香りの強い魚料理などと一緒に楽しむのがおすすめです。
苦すぎないIPAからはじめよう
IPAにはいくつかの種類があり、香りや味わいも大きく異なります。強い苦味が気になる初心者には、以下に挙げる苦すぎないIPAがおすすめです。
まずは本家「イングリッシュIPA」
IPAの強い苦味に不安を感じる人は、『イングリッシュIPA』からはじめてみましょう。
IPA発祥の地であるイギリス生まれのイングリッシュIPAは、ヨーロッパ産ホップによる紅茶のような香りと、刺激を抑えた味わい深い苦味が特徴です。トーストのようなモルト感も堪能できるでしょう。
アルコール度数を低めに醸造したイングリッシュIPAも存在します。刺激を求めて飲むビールというよりは、ゆっくりと味わいながら飲むタイプのビールです。
果物の味や香りが強い「ヘイジーIPA」
抑えた苦味とソフトな口当たりを求める初心者には『ヘイジーIPA』もおすすめです。2016年ごろにアメリカ北東部・ニューイングランド地方から広まったためニューイングランドスタイルIPAとも呼ばれ、フルーティーな香りと味わいを楽しめます。
ホップの苦味を抑えて香りのみを引き出す特殊製法で造られており、華やかでフルーティーなホップの香りを存分に味わえます。やわらかくなめらかな口当たりも魅力です。
ヘイジーIPAの名称は、濁り(ヘイジー)から付けられています。IPA本来の濁りのない琥珀色とは違う、濁った外観もヘイジーIPAの特徴なのです。
飲み続けやすい「セッションIPA」
『セッションIPA』は、IPAの個性を維持しつつ、さらに飲みやすくしたビアスタイルです。アルコール度数を5%以下に抑えている上、ホップの使用量も減らしています。
通常のIPAではアルコール度数が高すぎると感じる人や、IPAの強烈な苦味を少し抑えて飲みたい人におすすめです。ホップの華やかな香りや程よい苦味はそのまま堪能できます。
アルコール度数が低めに抑えられているため、飲み続けやすい点も魅力です。夏場の暑い時期に冷やしておけば、小難しい飲み方を意識せずにゴクゴクと飲み干せます。
ガツンとくる苦味がたまらないIPA
IPAの強烈な苦味を楽しみたい人には、以下に挙げるビアスタイルがおすすめです。それぞれの特徴や魅力を押さえておきましょう。
香り重視の「アメリカンIPA」
華やかなホップの香りを大きな特徴とするビアスタイルが『アメリカンIPA』です。アロマホップの代表格『カスケード』を使用し、豊かな柑橘系アロマを楽しめます。
カスケードは、1970年代にアメリカでリリースされたホップの品種です。アメリカンクラフトビールの方向性を決定づけたホップであり、柑橘系とシトラスが混ざったようなさわやかな香りが特徴です。
アメリカの西海岸で造られるアメリカンIPAは、ウェストコーストIPAとも呼ばれています。ホップの苦味やフレイバーが強く、鮮烈な柑橘系の香りを放つのが特徴です。
苦味が甘い香りを引き立てる「ベルジャンIPA」
『ベルジャンIPA』は、ベルギービール酵母を原料に使用したIPAです。アメリカで生まれたビアスタイルであり、アメリカのクラフトビール市場におけるトレンドになっています。
ベルギービール酵母特有の甘くフルーティーな香りは、ホップ由来の香りとはタイプが異なります。柑橘系を思わせるさわやかな香りがホップの特徴なのに対し、ベルギービール酵母は洋梨やキャンディーなどのようなダイレクトな甘さを感じさせます。
苦味を示す数値『IBU』が一般的なビールよりかなり高いことも特徴です。ホップの強烈な苦味が酵母の甘い香りを引き立てる、独特の風味を楽しめるでしょう。
上級者向け「ダブルIPA」
ホップを大量に使用するIPAの中でも、さらに多くのホップを使うビアスタイルが『ダブルIPA』です。『インペリアルIPA』や『エクストラIPA』とも呼ばれます。
日本の一般的なラガービールのIBUは約16~25、一般的なIPAは約40~65です。一方、ダブルIPAのIBUは基本的に70を超え、銘柄によっては100以上のものもあります。
アルコール度数が高い点も特徴です。一般的なIPAのアルコール度数が5~7%であるのに対し、ダブルIPAでは10%を超えるケースもあります。
ホップの華やかな香りと強烈な苦味が口の中にガツンと広がり、アルコール度数も高いダブルIPAは、骨太の味わいをしっかりと楽しめる上級者向けのビアスタイルです。
まとめ
IPAとは、ビールの原料の一つであるホップを大量に使って醸造され、強い苦味と香りを楽しめるビアスタイルです。
肉料理や中華料理、スパイシーな料理などと好相性です。冷やしすぎず、常温より少し冷たいくらいの温度で飲めば、ホップの香りをより堪能できます。特徴の異なるさまざまなIPAを飲み比べて、味と香りを楽しみながら研究してみましょう。