2021年12月5日 日曜日

ビール製造、販売のための免許の種類。発泡酒製造免許を受けるには

オリジナルビールを販売する場合、状況に合わせて許可を受ける必要があります。発泡酒製造免許を取得すれば、小規模店舗でビールを製造・販売するハードルを下げることが可能です。ビール作りや販売に必要な免許について、理解を深めておきましょう。

ビールの製造に必要な免許とは?

(出典) pexels.com

オリジナルビールを製造するためには、ビールまたは発泡酒の製造免許が必要です。それぞれの免許の違いや、小規模店舗が一般的に目指す免許について解説します。

税務署に申請し、製造免許を受ける必要あり

ビールをはじめとする酒類の製造には、酒税法で定められた免許が必要です。酒類の品目や製造場ごとに所轄の税務署へ申請し、製造免許を受けなければなりません。

販売予定がない自家用の酒類を作る場合も、一部の酒類以外は無免許で製造すると酒税法違反行為になります。無免許で製造された酒類と知りながら、その酒類を譲り受けたり所持したりする行為も同様です。

製造免許を受けるには品目ごとに最低製造数量基準(製造免許を受けた後1年間の製造見込数量が一定の数量に達しているかどうか)を満たしている必要があります。さらに拒否要件が設けられており、該当する場合は免許を受けられません。

ビールの製造を検討するなら、まずはこれらを確認しておく必要があります。

参考:【酒類製造免許関係】|国税庁

ビール製造免許のハードルは高い

2018年の酒税法改正以前、ビールの定義は『原料に対する麦芽比率が約67%(2/3)以上』であった上、副原料も限られた種類のものしか認められていませんでした。しかし、法改正によりビールの定義は『麦芽比率50%以上』となり、使用可能な副原料も増えています。

一方で、発泡酒の定義は『麦芽比率50%未満』となりました。この変更により、これまで「発泡酒」と表記されていたものでも『ビール』と表記できるケースもでてきました。発泡酒という分類に対してマイナスのイメージを持つ消費者も少なくないため、この改正には良い部分もあります。

しかしこれから製造免許を取得したいと考える人は、『ビール製造免許』のハードルが高いことを考慮しておく必要があります。

発泡酒製造免許に必要な最低製造数量基準が『年間6kl以上』であるのに対し、ビールの製造免許には『年間60kl以上』が求められます。

たとえば1330mlのビールなら、60000000ml÷330ml÷365日=約500本を毎日売り続けなければ、仮に規定の製造見込数を達成しても経営が成り立ちません。

小規模な店舗では発泡酒製造免許を目指す

そのため、オリジナルビールの製造・販売を予定している小規模店舗は『発泡酒製造免許』の取得を目指すのが一般的です。

実際に、2018年の酒税法改正直前には、多くの小規模店舗が発泡酒製造免許を駆け込みで取得しています。年間60kl以上のビール製造見込が立てられなかったためです。

発泡酒製造免許なら、年間6kl以上の製造見込を立てられれば製造免許が付与されます。製造する酒類の麦芽比率が50%以上でも、副原料の使用を麦芽比5%以上にしたり、ビールでは認められない副原料を用いたりすれば対応可能です。

参考:酒税法|国税庁
参考:ビール・発泡酒に関するもの|国税庁

発泡酒製造免許の取得法

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免許取得時に必要な書類や申請方法を押さえておけば、手続きをスムーズに進められるでしょう。行政書士に申請代行を依頼することも可能です。

必要書類と申請方法

発泡酒製造免許を取得するためには、製造場の所在地を管轄する税務署へ申請書を提出しなければなりません。申請の際は、製造免許申請書と併せて、主に次の添付書類が必要です。

  • 申請者の履歴書
  • 定款の写し
  • 契約書等の写し
  • 地方税の納税証明書
  • 最終事業年度以前3事業年度の財務諸表
  • 酒類の製造について必要な技術的能力を備えていることを記載した書類
  • 土地及び建物の登記事項証明書
  • 申請者の酒類製造場についての書類

申請書と添付書類を作成し、税務署に持参または送付すれば受け付けてもらえます。申請に手数料はかかりませんが、免許を一つ取得するごとに登録免許税の納税が必要です。

参考:[手続名]酒類の製造免許の申請|国税庁

行政書士等に申請代行を依頼する場合

自分で手続きする時間がない場合や、手続きするのが面倒な場合は、行政書士へ手続きを依頼すれば手間や時間を省けます。専門家に任せることでミスを防げる点もメリットです。

プロに申請を代行してもらう場合の費用相場は、35万~90万円が目安です。この費用には、登録免許税額15万円も含まれます。

行政書士に支払う報酬は、行政書士により大きく異なります。相見積もりを取った上で、費用の内訳を細かく確認しながら比較するのがおすすめです。

ビールや発泡酒の製造・販売に必要なその他の許可

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酒類を製造・販売する際は、発泡酒製造免許以外にも必要となる許可があります。ケース別に取得を求められる許可の種類を把握しておきましょう。

酒類製造業の営業許可

自社で酒類を製造・販売するためには、酒類製造業の営業許可を受けなければなりません。営業許可とは、国や自治体が定めたルールを守って営業していることを示すものです。

酒類製造業の営業許可を取得する際は、営業設備の大要・配置図を持参の上、所轄の保健所に相談しましょう。施設ごとに食品衛生責任者を配置する必要もあります。

貯水槽使用水や井戸水などを使う場合は、水質検査も行っておかなければなりません。食品衛生責任者と水質検査は、営業許可を得るのに必須なものであるため、事前に準備しておきましょう。

飲食店併設の場合は飲食店営業許可も必要

酒類製造業の営業許可を取得する店舗に飲食店を併設する場合は、飲食店営業許可を取得しなければなりません。保健所に申請し検査に合格すれば、飲食店営業許可の取得が可能です。

飲食店営業許可を取得するためには、食品衛生責任者を定める必要があります。食品衛生責任者は、食品の製造・販売を行う全ての店舗に、1人ずつ配置しなければなりません。

申請時に提出を求められる主な書類は、営業許可申請書・施設の図面・法人の登記事項証明書・食品衛生責任者資格証明・水質検査書です。施設が完成する10日ほど前に、必要書類を持参の上申請しましょう。

持ち帰り用として販売する場合は?

酒類を持ち帰り用として消費者に販売する場合は、『一般酒類小売業免許』を取得する必要があります。一般酒類小売業免許は、税務署に申請を行って取得できる免許です。

製造場以外の場所で酒類を別の容器に詰め替えて販売する場合は、『酒類の詰替え届出書』を税務署に提出しなければなりません。詰め替え容器には、販売業者・製造場所・製造者の情報を表示する義務があります。

期間限定で酒類の小売を行う際は、販売予定場所の所轄税務署へ『期限付酒類小売業免許』の取得申請を行いましょう。一時的なテイクアウトサービスを導入したいケースで必要な手続きです。

参考:[手続名]酒類の販売業免許の申請|国税庁

まとめ

自社でオリジナルビールを製造・販売するためには、税務署に申請して製造免許を受ける必要があります。小規模店舗は発泡酒製造免許の取得を目指すのが一般的です。

飲食店を併設したり、持ち帰り用として酒類を販売したりする場合は、状況に応じて製造免許以外にも許可を得なければなりません。営業スタイルに適した許可の種類や取得方法を、きちんと理解しておきましょう。

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