2021年11月10日 水曜日

クラフトビールの魅力とは。地ビールとの違いやおいしい飲み方を解説

クラフトビールとは、小規模な醸造所が製造する個性豊かなビールを指します。造り手の個性が味に表れるため、市販のビールとは一味違った新しいビール体験ができるのが魅力です。クラフトビールの特徴や起源、おいしい飲み方について解説します。

クラフトビールとは

(出典) photo-ac.com

日本のビール市場が縮小する中、存在感を増しているのが『クラフトビール』です。アメリカやヨーロッパに比べると日本では提供する店舗がまだまだ少なく、今後の伸びしろが期待されています。

小規模で個性的な醸造所が製造するビール

『クラフトビール』の定義は諸説ありますが、『大手メーカー以外の小規模な醸造所が製造するビール』を指すのが一般的です。

日本では1994年に酒税法の改正が行われ、ビール製造免許の取得に必要な最低製造量が年間2000klから60klに引き下げられました。(発泡酒免許は年間6kl以上)この規制緩和を皮切りに、地域密着型の醸造所が次々と誕生したのです。

全国地ビール醸造者協議会ではクラフトビール(地ビール)の特徴として、『大資本のビールから独立している』『伝統的な製法で製造している』『麦汁の製造量が20kl以下』などを挙げています。

地ビールとクラフトビールの明確な違いはありませんが、地域の土産物としての要素が強いものを『地ビール』と呼ぶ傾向があるようです。

参考:「クラフトビール」(地ビール)とは 全国地ビール醸造者協議会

アメリカ発祥と言われている

クラフトビールの歴史は1960年代のカリフォルニアに端を発します。フリッツ・メイタグが倒産直前だった醸造所を買い取り、カリフォルニア伝統の『スチームビール』を商品化して大成功を収めました。

その後、ニュー・アルビオン・ブルーイング社やシエラネバダ・ブリューイング社などが追随し、90年までにはカリフォルニアに70近くの醸造所が誕生します。カリフォルニアクラフトビール協会によれば、州内にある醸造所は900を超え、その数は現在も増え続けているそうです。

ニューヨークのブルックリンにも『Brooklyn Brewery』と呼ばれる有名な醸造所があります。80年代後半に設立されて以来、クラフトビールメーカーのパイオニアとして街の活性化に貢献しています。

クラフトビールの魅力

(出典) photo-ac.com

酒税法改正以降、クラフトビール(地ビール)の魅力が再認識されています。「ビールは自分の好みで自由に選べるもの」ということに初めて気付いた人も多いでしょう。クラフトビールの二つの魅力について解説します。

ビール職人のこだわりが詰まっている

近年は大手メーカーの参入が増えていますが、小さな醸造所が生み出すクラフトビールは大量生産やオートメーション化とはほぼ無縁です。素材選び・製造工程・パッケージデザインの全てに造り手の思いが反映されるため、唯一無二のビールが体験できるのが大きな魅力でしょう。

旬の素材を取り入れたり、原料そのものを見直したりと、既存のルールに囚われないクラフトビールはどれもユニークでクリエイティブです。

喉越しや爽快感を追求した大手のラガー系ビールと違い、個性的なクラフトビールは『料理』や『グラスの形状』を選びます。ベストなペアリングを見つけるのも楽しみの一つといえるでしょう。

季節、気候、気分などに合わせて楽しめる

これまでは『地ビール=地域の土産物』というイメージがありましたが、若手の醸造家による『クラフトビール専門店』の増加と共に、「クラフトビールはおしゃれでクオリティが高い」という認識が高まっているようです。

こうした店舗では「とりあえず生ビール頂戴」ではなく、多種多様なクラフトビールのラインナップの中から、季節や気候、その日の気分に合ったものが選べます。

果汁を加えたフルーティなビールやバナナやクローブのような香りのビールもあり、「普段あまりビールは飲まない」という20~30代や女性の間にもファンが広がっています。

クラフトビールの種類

(出典) photo-ac.com

世界には100種類以上ものビアスタイルがありますが、店舗で流通しているビールの大半は『ピルスナー』と呼ばれるビールです。日本人は個性豊かなビールの世界をほとんど知らないといっても過言ではありません。代表的なクラフトビールの種類を紹介しましょう。

苦味がクセになるIPAなどが代表的

クラフトビールの火付け役ともいえるのが、『IPA(India Pale Ale)』です。イギリス発祥のビアスタイル『ペールエール』の一種で、強い苦味と香りがガツンと口の中に広がるのが特徴です。

大航海時代、イギリスの植民地であったインドにペールエールを輸送する際に防腐効果のある『ホップ』を大量に投入したのがIPAの始まりと言われています。

IPAと一口にいっても、『アメリカンIPA』や『ダブルIPA』『ニューイングランドIPA』など、多くの種類があります。飲み比べをして自分好みの味を見つけられるのも、IPAならではの魅力でしょう。そのほか、代表的なクラフトビールには以下が挙げられます。

  • ピルスナー (Pilsner)
  • スタウト (Stout)
  • ペールエール (Pale Ale)
  • ヴァイツェン (Weizen)
  • フルーツビール (Fruit Beer)
  • バーレーワイン(Barley Wine)

初心者はビアフライトでお試しがおすすめ

『ビアフライト』とは、ビールの飲み比べができる『テイスティングセット』のことです。グラスのサイズは通常よりも小さめで、一度に3~4種類のビールが味わえます。

自分好みのビールが分からない初心者に対しては、ビアフライトでじっくりとテイスティングをすることをおすすめしましょう。

クラフトビール専門店の中には、各ビールに合ったおつまみや料理を提案しているところもあります。ビアフライトに数種類のおつまみが付いたセットはクラフトビール初心者はもちろん、「ちょっとずついろいろな味を堪能したい」という上級者にも好評です。

クラフトビールのおいしい飲み方

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ビール好きの中には、「このグラスで飲むビールが一番おいしい」というマイグラスを持っている人がたくさんいます。クラフトビールは『温度』と『グラスの形状』によって、香りが増幅したり、味わいが変わったりするのが特徴です。

ビールの種類に適した温度で飲む

クラフトビールには種類ごとに『飲み頃の温度』があります。「ビールはキンキンに冷えたものでなければ」と言う人がいますが、冷やしすぎると本来の味や香りが感じられなくなってしまう種類もあるのです。

例えば、エールビールは8~14℃が飲み頃といわれています。冷たくすれば喉越しや爽快感はアップするものの、エールビールの特徴である豊かな香り(アロマ)やコクは弱くなります。

一方で、すっきりとした苦味と爽快感が特徴の『ピルスナー』は6~8℃前後が飲み頃です。個人の好みにもよりますが、色の濃いビールは『高め』、淡いものは『低め』で飲むのがベターとされています。

泡立ち、香りを考えてグラス選びをする

ビールの美味さを左右するのは『温度』だけではありません。グラスの形状によって香り・味わい・泡立ちが変化します。

飲み口が狭く、中央部が丸みを帯びた『ワイングラス型』は複雑な香りを内に留めるのが特徴です。脚付きなので手の温度が伝わりにくく、一定のフレッシュさが保たれるというメリットもあります。フルーツエールやスタウト、バーレイワインなどの香りを楽しむビールにぴったりでしょう。

細みで背が高い『タンブラー型』は、豊かな泡立ちや喉越しを楽しむピルスナーに向いています。IPAを提供する際は、卵型のグラスに凹凸のある持ち手が付いた『IPAグラス』を使ってみましょう。鮮烈なホップの香りと苦味がバランスよく感じられます。

鮮度が守られたクラフトビールがおいしい

(出典) unsplash.com

クラフトビールの命ともいえるのが『鮮度』です。管理を怠った場合、ビール職人が意図した味や香りの再現が不可能になってしまう恐れがあります。クラフトビールを提供する専門店は、貯蔵タンクの状態をいかにキープするかに力を注がなければなりません。

クラフトビールはデリケート

クラフトビールの先進国であるアメリカやヨーロッパでは、「ビールは醸造場の煙突が見えるところで飲む」のが基本です。

一般的なビールの製造過程では、熟成後に熱処理を加えたり、酵母を濾過したりして発酵を止めるのが通常ですが、クラフトビールの多くは『無濾過』『非加熱処理』で出荷されます。ちょっとした振動や温度でも品質が変化してしまうため、できるだけ早く飲むのがベストです。

クラフトビールを扱う店舗では、醸造仕立ての新鮮さを保つための万全の管理体制が欠かせません。ダメージに弱い生鮮食品であることを忘れずに扱いましょう。

醸造所併設のお店ブルーパブも注目を集める

クラフトビールのブームと共に注目を集めているのが、店内に醸造所を併設した『ブルーパブ(Brew Pub)』です。

酵母が生きているクラフトビールは時間や温度、振動などで品質が変化していきますが、こうしたお店では劣化が最小限に抑えられた、鮮度の高いビールが堪能できるのが魅力です。

樽にはタップと呼ばれる注ぎ口が付いており、『タップの数』は『飲めるビールの種類』を表します。こだわりの5タップを提供する店もあれば、10種類以上のタップを常備する店もあり、店舗ごとにスタイルが異なります。

まとめ

造り手のこだわりやクラフトビールの奥深さに魅了され、「多少値段が高くても、こだわりの一杯が飲みたい」という人が後を絶ちません。

若者のビール離れが進む中、クラフトビール市場が急拡大しているのは、多様さや自由さを求める現代人のライフスタイルにマッチしているからともいえるでしょう。ビール販売量におけるクラフトビールの割合は今後もどんどん増えていくことが予想されます。

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