2019年3月6日 水曜日

ビールの仕込み~続編:ホップと酵母の投入~

ビールの仕込み1の続きです。

醸造工程をざっくりと説明してきて、麦汁の煮沸まで話をしました。ここでホップの添加をすると話しましたが、ホップがどんなものかご存知ですか?

写真のコーンになっている部分がビール醸造に使われる部分です。収穫時期には摘みたてを使ってフレッシュホップエールみたいな事を行うブルワリーは特にアメリカで多いです。多くの場合、この部分を乾燥させて水分を抜く事により、投入する量を抑える事が出来ます。乾燥したものをさらにペレット状にしたものを私は普段使っています。ペレット状になったものの方が扱いやすい、場所を取らないなどの利点があるためですが、ペレットになっていないホップを好んで使うブルワーさんもいらっしゃると思います。最近ではホップの加工技術が進み、液体窒素を酸素が限りなく少ない環境でホップにあてることにより酸化の可能性を低くした上でホップに含まれる良い香り成分だけを粉状に加工する事も行われています。これが通称 Cryo Hop(クライオホップ)やLuplin Powder(ルプリンパウダー)などと呼ばれているものです。ペレット状のホップに比べてさらに量を少なくして香り付けを出来る事から、ここ数年人気のあるNew England IPAやBrut IPAに良く使われます。

ホップの説明長くなりました、すみません。話を醸造工程に戻します。

IPAを飲んだ時に感じる苦味、香りはほとんどホップ由来のものです。エール系、特にホップのアロマを意識したアメリカンペールエールやアメリカンIPAはこのホップの添加する量やそのタイミングが重要になります。ホップの成分は何百とあるので全てを説明する事は私には不可能ですが、ここで重要になるのはアルファ酸と呼ばれる成分です。ホップの品種によってアルファ酸の含有量が異なるので、どのホップをどれくらい、どのタイミングで使うかが煮沸では重要になります。

苦味を付けたい場合はアルファ酸の高いホップを煮沸の最初から投入します。アルファ酸というのは、ビールの苦味にも香りにもなる成分なのですが、熱を加える事によって苦味に変性されます。逆に香りを付けたい場合は煮沸の後半や煮沸が終わってからホップを入れる事になります。伝統的な(?)ウエストコーストIPAは苦味も香りも強いので、煮沸の最初にも中盤にも最後にも、発酵終了後にもとにかくホップ!といった形で造られていた、もしくはまだ造られている、のではないでしょうか。逆に香りが強めで苦味が控え目なNew England IPA(濁ったIPA)は煮沸の前半にホップをほとんど使わず、煮沸後半にも(ほとんど)使わず、煮沸後に大量にホップを投入するといった方法がとられます。

煮沸では苦味とホップの味、香りが付くという説明だったのですが、ご理解いただけたでしょうか?ホップの加工などの話をしたのは、近年ホップの苦味を抑えて香りを強めにするビールが人気であるためそれに合わせてホップの生産者や加工する側も工夫を凝らしている、という事が伝わっていれば嬉しいです。

そしてまた醸造工程に戻りますと、煮沸が終わると今度は酵母を投入するのが醸造工程の着地であるため、ぐつぐつ煮立った麦汁を冷まさなければなりません。ただ冷ます前に煮沸した際に投入したホップや麦汁に含まれていた余分なタンパク質などが出てくるので、液体とそれらの個体を分離する作業があります。ワールプールと呼ばれる作業なのですが、最近ではこのタイミングでホップを入れるブルワーさんが多いように思います。ここは煮沸後で温度も下がり始めるタイミングなので煮沸している時に比べてアルファ酸が苦味に変性する割合が減ります。特に80度よりも下がると変性する割合が急激に落ちるため、苦味は付けたくないけどホップのフレーバーや香りが欲しい!という場合はそのタイミングでホップを投入します。100度で煮立っていた大量の麦汁を70数度まで下げるのも大変なのに、どうするの?という時に活躍するのが、この謎の物体

Wort Chiller(ウォートチラー)と呼ばれていて、意味はウォート=麦汁、チラー=冷却器という事で麦汁冷却器です。片方から麦汁を通し、もう片方から冷たい水を流す事により熱い麦汁が冷たくなり、冷たい水があったかくなって出てくるといった魔法の物体です笑

ここで狙った温度まで下げてホップを添加する事が出来るようになります。ここでホップを入れない場合はワールプール作業を終えたらそのまま麦汁を冷やしながら発酵タンクに移送となります。

発酵タンクってこんなやつです

下が円錐形になっているのが目印。下がフラットなものも無くはないですが、発酵タンクは大体このような形状をしています。ここに先ほどの魔法の物体で冷やした麦汁を移します。エール系の場合は酵母を18度から高くても20度くらいで投入したいので、仕込んでいるビールのスタイルによって温度を微調整しながら温度を確かめて酵母を投入します。ここでラガーの場合は温度がもっと低い状態で酵母を投入します。エールでもどこまで酵母の出す香りが欲しいかによって1度の差が結構大きく最後の味に左右します。ここで酵母投入が終われば、最後は掃除・片付けをして清潔にして醸造工程は一旦終了となります。

ざっくりとなり過ぎないように書いたのですが、いかがでしたでしょうか?長文にお付き合いいただきありがとうございました。今回書いた「ビールの仕込み1」と「ビールの仕込み2」についてご質問あればツイッターの方でご連絡お待ちしてます。

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